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ミステリとホラーが融合された作風

三津田 蔡駿さんのこの二作にはホラーとミステリの要素が両方入っていると思います。私も常々ホラーとミステリを融合させた作品を書いています。私自身は順番からいうとまず謎解きのミステリが好きになったのですが、好きすぎるあまりにすべてが論理的に割り切れることが逆に物足りなくなって、一気にホラーにのめり込んでいったという読者歴があるのですが、蔡駿さんは作家になる前にホラーとミステリにどのように接してこられたのでしょうか?

 また、ホラーとミステリの分野で好きな作家や作品を教えていただけますか?

蔡駿 数年前に三津田先生の『首無の如き祟るもの』を拝読して強い共鳴を感じました。先生の作品中に描かれた奇譚・怪談の物語と卓越した想像力に非常に惹かれました。最近も、三津田先生の中国語に翻訳された作品を拝読しているところです。

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 ほかにも日本のホラーやミステリはたくさん読んでいます。松本清張先生、森村誠一先生の作品もたくさん読みましたし、現在の人気作家の東野圭吾先生や宮部みゆき先生も読んでいます。昨日は舩山むつみさんに案内していただいて、町田市民文学館で開催されている森村先生の没後一年を記念する展覧会を見学してきました。

舩山 昨日は大変熱心にご覧になっていましたね。森村作品の中では『青春の証明』が一番お好きとのことでした。『幽霊ホテルからの手紙』の中でも森村作品の一部を引用されていました。

三津田 作品を書かれるに当たってホラーとミステリのバランスはどんな風にとっていらっしゃいますか? また私自身の話で恐縮ですが、私はミステリを書いているとやっぱりホラーも好きだからホラー要素を入れたくなってくるし、ホラーを書いているとミステリの要素を入れたくなってきて、結局ホラーとミステリが両方入っている作品ばかりになってしまうんです。

蔡駿 ホラーとミステリの二つのバランスに関してはかなり意識しています。私はホラーとミステリは題材として同じ作品に同時に取り入れられると思っていて、作品の執筆前に、これからどういったジャンルの題材を取り扱うのか、どういった作風に仕上げていくのか、小説を構想する段階でホラーとミステリの割合を決めておく場合が多いです。

 ここ数年、私の作風は非常に多様化しています。今回、日本語に翻訳された『幽霊ホテルからの手紙』と『忘却の河』は、私の作風の中のほんの一部分に過ぎません。サスペンスとミステリの題材を純文学と結合させるような作品もあります。多様化している私の作品を、今後もっと日本語に翻訳していただければと期待しています。

三津田 蔡駿さんはいわゆる謎解きミステリ、読者に100%手がかりを与えて謎解きに挑戦させる、日本では本格ミステリと呼ばれていますが、そういった作品はお書きになっていますか? あるいはこれから書いてみようという気持ちはありますでしょうか?

蔡駿 私の場合は、登場人物の視点や立ち位置などを手掛かりにストーリーの構成を決めて物語を作っていきます。事件そのものの複雑さやトリック的な要素にはそこまでこだわりはありません。事件やトリックが複雑すぎると、逆に登場人物の存在感を弱めるのではないかという心配があるからです。ですが、私の作品の中には日本の本格派のトリック小説に近いものもあります。こちらも日本語に翻訳、紹介されて多くの日本の読者のお目に留まることを願っています。

三津田 最後にもう一つ伺います。好きなホラー映画の監督はいますか? お好きなホラー映画作品は? 私はダリオ・アルジェント監督が好きなんですが、ご存知でしょうか(笑)。