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最新の映画化作品で脚本・監督をつとめる

蔡駿 映画の話となりますと、じつはつい最近、私が脚本を書き、監督もした『Xの物語』という映画がクランクアップしたばかりです。来年、中国で公開される予定です。この映画を製作するために長い年月をかけて準備してきました。さまざまなジャンルの映画を研究する必要があったからです。

 日本の映画ですと、黒澤明監督の作品が好きでたくさん見ています。今村昌平監督の『復讐するは我にあり』にも強く感銘を受けました。三津田先生がお好きなイタリアの映画監督、ダリオ・アルジェントも何作か見たことがあります。登場人物の心理描写が巧みですね。昨年、アルジェント監督の『スタンダール・シンドローム』という映画も見ました。

司会 では続きまして三橋先生、お願いいたします。

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三橋 日本では今、ホラー小説がブームになっていまして、今年の春には『このホラーがすごい!』という年間ランキングのムックも刊行されました。その年間ベスト20では、蔡駿さんの『幽霊ホテルからの手紙』が4位、『忘却の河』が13位にランクインしています。

 今の日本のブームは、怪談実話やモキュメンタリー(フェイク・ドキュメンタリー)の流行と呼応しながら、徐々に盛り上がってきた感があります。最近の中国でもホラー小説をめぐる動きはありますか? もしあるならば、蔡駿さんはそのブームをどうお感じになっていますか? また、ご自身の創作はブームとどのような関係にありますか?

蔡駿 中国のホラー小説はご存知のように、欧米や日本の小説に多大な影響を受けて生まれたものです。僕個人について言いますと、初めて挑戦した長編小説『VIRUS 病毒』は、鈴木光司先生の『リング』シリーズに影響を受けて創作しました。もちろんアメリカのホラー小説の権威であるスティーヴン・キング先生の作品からの影響も執筆の理由の一つです。後に三津田先生の大作を拝読して刺激を受けた部分もあります。

 中国の場合は新人作家が作品を発表するルートの一つとして、ネット小説と呼ばれるジャンルがブームになっています。私自身はそこには含まれませんが、ここ数年ネット文学にはホラーからミステリなど多彩なジャンルの作品が投稿されています。日本では「クトゥルーもの(H・P・ラヴクラフトが創作した架空の神話の影響下にある作風)」と呼ばれているジャンルの作品もあります。