ジャーナリスト・笹井恵里子さんは年間88万円の国民健康保険料を突きつけられ、高額で絶句したという。『国民健康保険料が高すぎる! 保険料を下げる10のこと』(中公新書ラクレ)より、保険料の支払いに困窮する人々の事例を紹介する。(全2回の2回目/前編から続く)

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配偶者との死別、離婚を機に滞納に陥る

 かつて滞納相談センターの相談員だった師岡徹氏(師岡徹税理士事務所)も、自身が関わった2つの差し押さえの事例を紹介してくれた。

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 夫を亡くし、3人の子どもを抱えながら働く女性がいた。九州に住むその女性は現在は会社員として勤務しているものの、亡き夫の市民税や、死別後の自身の国保料、固定資産税の未納分が30万円、延滞金も発生していた。女性が「月々1万円であれば納付が可能」と主張しても、行政は聞く耳をもたず、女性の18万円の給料を全額差し押さえた。

「私から行政に全額差し押さえは違法であること、また納税についても『家計の状況を鑑みることができないのか』と言っても、『できない』の一点張りで。これまでの裁判の事例や国税徴収法の話をまじえて交渉し、請願書などを作成して、結果として月々市民税3000円、国保料3000円の支払いで落ち着きました」(師岡氏)

 もうひとつのケースは、市民税24万円、国保料90万円を滞納している千葉県在住の女性。数年前に離婚し、その過程で滞納が膨らんでいったという。

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 女性は行政と毎月3万円の分納を約束したものの、途中で支払えなくなり、やがて「生命保険の差し押さえ通知」が……。女性はそれだけは勘弁してほしいと、師岡氏のもとに駆け込んだのだった。

「彼女は毎月手取り28万円程度を得ていたものの、日給制の仕事なんですね。何かで休めば、翌月の給料が減ってしまう。給与や支出の状況を明らかにし、確実に支払い可能であるのは月々1万円ということを丁寧に説明して、やっと合意できました。2つの事例から、一度レールから外れてしまうと社会復帰が遠のくという、日本のシステムの脆弱性を感じました。多くの人が『自己責任』という言葉に追い詰められ、支払い能力を超えた返済額を約束してしまうのです」(同)

 たしかに特に女性は、配偶者との死別や離婚を機に国保料を含めた税の滞納に陥りやすいのかもしれない。