ジャーナリスト・笹井恵里子さんは年間88万円の国民健康保険料を突きつけられ、高額で絶句したという。『国民健康保険料が高すぎる! 保険料を下げる10のこと』(中公新書ラクレ)より、保険料の支払いに困窮する人々の事例を紹介する。(全2回の1回目/後編に続く)

写真はイメージ ©ideyuu1244/イメージマート

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保険料を払えても病院に行けない

 数十年フリーカメラマンとして活動し、60歳になったばかりのB氏から今年6月に、「国民健康保険料の通知が来ました。月3万6000円。任意だったら加入しない」というメールが送られてきた。B氏は離婚し、子どもは独立して、今は独り身。1人分でその国保料は高いだろうと思う。私は現在、文芸美術国民健康保険組合という、市町村国保とは異なる「職業別の国保組合」に加入している。娘と2人で月4万6800円だが、自分1人ならおよそ月額3万円だ。文芸美術国保組合は、文筆業以外にも写真家、デザイナー、イラストレーターなどでも加入できる。ただし、自身の職業団体に加入しなければならない。B氏の場合なら、写真家関連の協会に所属した上で、文芸美術国保組合に加入の申請を提出する必要があるのだ。

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 B氏に写真家団体と文芸美術国保組合への加入を勧めてみたが、「あの(写真家)団体は会費が高いし、あまり良い団体とも思っていないから」と言われてしまった。過去に何度か誘われて、断ったらしい。たしかに職業団体に加入するにも「入会金」や「年会費」が万単位で発生する。

「実質的に“強制”なのに保険というのってどうかと思う。収入が低いから病院にだって行けないしね」とB氏。後日、彼にここ3年間の所得と国保料を教えてもらった。

 2020年の所得約124万円→翌年(21年)国保料/年間11万2700円

 2021年の所得約72万円→翌年(22年)国保料/年間13万1100円

 2022年の所得約170万円→翌年(23年)国保料/年間18万1000円

 3年間の中で、21年の所得が72万と低い割には前年の国保料よりも高い金額であることに驚く。B氏は「保険証をもっていてもなんの役にも立たない」と肩を落とす。