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 日テレ側の報告書は、ドラマ化の条件について芦原さん側とのあいだに「認識の齟齬があった」と総括し、小学館側は「日本テレビ側が原作者の意向を代弁した小学館の依頼を素直に受け入れなかったことが第一の問題」とまとめている。ディテールに関しては「言った/言わない」の水掛け論になっており、第三者的に見れば責任のなすりつけあいをしているような印象を受ける。いずれにせよ、放送前の2023年6月の時点で、すでに小学館と日テレの間に齟齬が生じている点は看過できない。問題の火種は、半年以上も前から放置され続けたのだ。

 双方の報告書は、再発防止のためにはコミュニケーションの改善と契約の明確化が重要で、伝言ゲームではないやり方で合意形成に至るプロセスを実現し、納得のいく脚本が仕上がってからドラマの撮影に入るべきとまとめている。

 SNSに「アンサー」を投稿したあとの炎上を目にした芦原さんは、Xに「(脚本家を)攻撃したかったわけじゃなくて。ごめんなさい」と投稿。SNSにアップしていた内容を削除したうえで失踪する。つまり自死の直接的な要因は、制作過程の齟齬よりもSNSで騒ぎを大きくしてしまったことへの悔恨に求められよう。したがって本件には「炎上案件が最悪の結末を迎えた」との側面も含まれている。

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芦原さんのポスト

「個人のインスタグラムを止めることができるか確信できない」

 では、この炎上は未然に防げなかったのだろうか。端緒となったのは、12月24日と28日の脚本家によるインスタグラムへの書き込みであることは間違いない。自身には不明瞭な情報しか伝えられず、クレジット表記の問題に関して(主観的には)泣き寝入りを余儀なくされると危機感を感じた脚本家は、12月6日時点で「SNSに原作者さんからの強い要望で最後(9-10話)お預けしました、というような表現で投稿することも考えている」(日テレ報告書)との旨を日テレ側に伝えていた。日テレ側は、2週間以上の猶予もあり、脚本家を説得して、SNS投稿を思いとどまらせることもできた。だが、「個人のインスタグラムを止めることができるか確信できない」(小学館報告書)として、投稿はなされた。