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「お前は猫背を直せ」と言われた松之丞は…

 伯山自身は、講談を受け継ぎ、次世代へつないでいく立場の人間として、「継承」をどう捉えているのだろうか。

「2017年から、お正月に連続物を読ませていただいています。年明けにも『清水次郎長伝』を5日間連続で読みますが、正月早々、お客さまもいろいろなことを犠牲にして会場に集まるという、たいへん負担の大きな会となっております(笑)。

 でも、私がこうして連続物に取り組んでいるのも、一門の歴史が関係しています。大師匠にあたる二代目の神田山陽は『十話も二十話も続く連続物なんて、もう誰も聞かないよ』と一話完結の読み切りにシフトしたんです。ところが、私の師匠である神田松鯉は講談の本質は連続物にあると考え、嫌がる師匠から話を教えてもらった。つまり、師匠を否定した『鬼っ子』だったからこそ、今の講談があるわけです」

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 伯山も、神田松之丞と名乗っていた頃は講談の先生たちからの助言を素直に聞かなかったと振り返る。

「松之丞、お前は高座での猫背を直せ、と散々言われました。でも、直さなかったです。余計に猫背にしてやろうと思ってました(笑)」

神田伯山 ©佐藤亘/文藝春秋

よりによってクリスマスイブにイベントを

 不惑を過ぎた伯山、12月11日から20日まで新宿末広亭で主任を務めた12月中席も連日満員。ただし、苦戦中のイベントもあるとのこと。

「よりによってクリスマスイブに、練馬文化センターで、猪木さんに凄まれたアナウンサーの清野さん、それに力道山未亡人の田中敬子さんをゲストに招いてプロレスのトークショー『神田伯山&清野茂樹クリスマストークショー 〜力道山未亡人を迎えて〜』をやります。これがですね、びっくりするほど売れてない(笑)。たしかに、恋人たちはどこかでイチャイチャしてるでしょう。仕事がいそがしい人は、仕事納めに向けて必死にPCに向かっている頃でしょう。でも、来てください。いろいろプレゼントも用意してますから。

 力道山が着ていたのと同じデザインのようなガウン、これは10万円ほどする特注品で1名様にプレゼント。いまなら当選確率が高いです(笑)。それにゆかりのあるくつべら、力道山の愛好した『ジョニ黒』こと、ジョニー・ウォーカーの黒ラベルも3名様にプレゼント。それに私がある理由で封印していた講談、『グレーゾーン』も久しぶりに高座で読ませていただきます」

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