30年来のジャニーズ(現STARTO ENTERTAINMENT)ファンであり、2023年の一連のジャニーズ性加害問題以降に感じてきた葛藤と思いを込めた『夢物語は終わらない ~影と光の“ジャニーズ”論~』(文藝春秋)を上梓した霜田明寛さんが選ぶ、“ジャニーズ映画TOP5”。アイドル主演映画と馬鹿にしてはもったいないその魅力とは?

“ジャニーズ興行保証”で成立する異色の企画

 アイドルの出ている映画はB級映画――。そう考えている人も多いかもしれない。しかし、ことジャニーズの出演映画においては、それは当てはまらない。

“ジャニオタ”として揺れるジャニーズ事務所への率直な想いを綴り、様々な問題を踏まえた上で見えてくる事務所の特異性と未来に迫った『夢物語は終わらない~影と光の“ジャニーズ”論~』(文藝春秋)。その中で、筆者は“ジャニーズ興行保証”と呼んでいるが、ジャニーズが出演することによってある程度興行の見込みがつくため、受けを狙って表現を丸める必要がなく、監督はその作家性を存分に発揮して作品づくりができるのである。

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『夢物語は終わらない~影と光の“ジャニーズ”論~』(文藝春秋)

 たとえば、“ジャニーズ興行保証”のもとでは、関ジャニ∞(当時)の渋谷すばるが主演でバンドの赤犬が出演した『味園ユニバース』(2015・山下敦弘監督)や、古谷実の原作を森田剛主演で映画化した『ヒメアノ~ル』(2016・吉田恵輔監督、*吉は土に口))などのように、ジャニーズというメジャーカルチャーとサブカルチャーの境界線を越えるような異色の企画が成立する。さらに、嵐5人の主演映画にも関わらず、当初公開館は1館のみだった『ピカ☆ンチ LIFE IS HARDだけどHAPPY』(2002・堤幸彦監督)など、公開規模もインディーズとメジャーを行き来する。他にも『夢物語は~』では“ジャニーズ興行保証”が発掘した現在の映画・演劇界を牽引する才能や、藤島ジュリー景子の仕事の功績のひとつである『ピカ☆ンチ』の制作・配給会社、J stormの設立の背景や強みなどを解説している。

 筆者は、普段はパンフレットに寄稿をしたり、映画監督にインタビューすることを生業としている。本稿では、2000年代以降のジャニーズ映画はすべて観てきた筆者にとっての“ジャニーズ映画TOP5”を紹介したい。