デンマーク人形劇の名作
(3)『ストリングス~愛と絆の旅路~』(2007)
『ストリングス~愛と絆の旅路~』はデンマークの人形劇である。実際に糸で繋がれたマリオネットの人形たちによって、「人と人とは繋がり合っていて、お互いに影響を及ぼしあっている」というメッセージを視覚的に表現している。子どもから大人まで楽しめるとんでもない傑作なのだが、そのままでは日本で公開されることはなかっただろう。だが当時J stormと対を成していたSMAPの関連会社、J-dreamが制作・配給を担当し、草彅剛と香取慎吾が声優として出演することに。『新世紀エヴァンゲリオン』の庵野秀明と阿佐ヶ谷スパイダースの長塚圭史が脚色を手掛け、ジャパン・バージョンとして公開された。キャストありきで企画が進行することもあるほどのキャストパワーは、ときに批判されることもある。だが、そのパワーが埋もれかけた世界の名作を、日本に届けてくれるといういい方向に働いた例である。
(2)『ブラック校則』(2019)
当然のことながら、俳優自身と役は別物だ。だが、ときに俳優自身の生き様と、作品が重なりを見せることがある。その好例がSexy Zoneの佐藤勝利が主演、King & Princeの髙橋海人とSixTONESの田中樹も出演する『ブラック校則』だ。生徒たちを規律で縛り、画一化しようとする教師たちと、そこに抗い自分を貫こうとする高校生たちの対立を描く。それは『夢物語は~』で主張した“自分の頭で考え”“他と同じになることを嫌う”ジャニーズタレントの存在と大きく重なる。本作は、Sexy Zoneがデビュー曲の歌詞で歌った「大人の決めたやり方 それが正解なの?」というフレーズの映像化と言ってもいいほどだ。とくに髙橋海人の飄々としつつ、どこかにカリスマ性を感じさせる演技が素晴らしい。本作のプロデューサー河野英裕は4年後にドラマ『だが、情熱はある』でオードリー・若林正恭の役に髙橋を起用することになる。映画好きにとって、テレビ局主導の企画は冷笑されがちだし、そこにアイドル主演が加わると尚更その傾向が強まる。だが本作は、その固定観念で食わず嫌いをしていると損をする、隠れた秀作である。