2024年に「文藝春秋 電子版」に掲載された記事の中から、編集部員がとくに心を掴まれた「イチ押しの言葉」を紹介します。
村上隆「俺だって認知症になってからが勝負だと思ってる」
(2024年4月号、村上隆×村上裕二「オヤジはマジメだったなあ」)
新しいことに次々と挑戦してきたアーティストが、まだ自分の内なる変化に賭けているところに気迫を感じました。対談相手の弟に、「裕二はいま糖尿病で視力を失いつつあるけど、絵描きとしてはここからだと思う。聴覚を失って傑作を生んだベートーヴェンのように」とも。老化や病気も芸術家には新たな進化のきっかけというとらえ方に目が覚める思いでした。(編集長・鈴木)
草彅剛「謎にテレビにも出られなくなって」
(2024年6月号、「有働由美子のマイフェアパーソン」第65回)
有働さんに「退所後を振り返っていかがでしたか?」と聞かれての一言。草彅さんや香取慎吾さん、稲垣吾郎さんは旧ジャニーズ事務所(現・SMILE-UP.)から独立後、民放テレビから姿を消します。そして2019年、公正取引委員会が旧ジャニーズ事務所に対し、テレビに出演させないよう圧力をかければ独占禁止法に違反する可能性があると注意をしていたことが明らかになります。事務所の功労者であるはずの彼らへの仕打ちは、あまりにも酷いものでした。ただ草彅さんは有働さんにこうも言っています。「反面、一つ仕事が決まるだけで滅茶苦茶嬉しかったです。少人数でも、同じ方向を向いている仲間がいる楽しさを感じることが出来ました」。理不尽な状況にあっても、草彅さんたちが前向きに進んできたことがわかって、少し救われた気持ちになりました。(編集部・柳原)
角田愛美「歯さえなければ!」
(2024年7月号、「口の老化 戦略的な抜歯のすすめ」)
要介護高齢者の“最後の砦”として活躍する在宅診療医ならではの格言。口の健康は毎日のメンテナンスが全てです。手入れを怠った要介護者の口内細菌数は、排水口や肛門と同等レベルにまで達し、残された歯は細菌の温床となり、全身疾患の原因になります。超高齢化社会における“自歯信仰”の矛盾と向き合う在野の医師の叫びには、説得力しかありませんでした。かくいう私も我が身を反省し、数年ぶりに歯医者通いを再開しました。(編集部・佐藤)
〈芸術家の兄弟対談〉オヤジはマジメだったなあ