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不倫疑惑

 出産から半年ほど経った2017年の5月頃、友だちから耳を疑うような情報を入手する。その友だちの友だちが、荻原さんの夫らしき男性が、年上の女性と一緒にラブホテルから出てきたのを目撃したという情報だった。

 それを聞いた瞬間、荻原さんは目の前が真っ白になった。

「『信じたくない』と思いながら家に帰り、その日の夜、帰宅した夫に『あの日のあの時間、本当に仕事だったの?』と聞いてみたところ、夫はいつもの優しい感じで、『そうだよ』と答えました」

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 ところがそれからというもの、荻原さんは夫の帰宅時間が遅くなる度に不倫を疑い、問いただしてしまう。勝手に夫のスマホを見たり、仕事用の鞄を漁ってシフト表を探したり、帰宅した夫の匂いを執拗に嗅いだりしては、不審な点があれば泣きながら責める。その度に夫はなだめ、謝り、抱きしめた。

「あるとき夫の頭に10円ハゲができているのに気づいたのですが、『仕事が忙しいからだね~』と私が言ったら、『嫁が怖いからだよ~』と返され、カチンときた私は、『私が怖い? これで怖いとか何?』と夫を責めてしまいました。今思えば、夫の微かな抵抗だったのかなと思います」

 徐々に夫は「残業」と言って帰宅が遅くなる日が増えていき、その度に荻原さんはヒステリックに夫を疑い、罵った。

 さらに、荻原さんが不安定になるのと比例するように、荻原さんの身の回りで不審な出来事が起こるようになっていく。

 玄関のドアに「あなたの旦那さんは不倫をしていますよ」と書かれた紙が貼られていたり、家の庭や駐車場などの敷地内に、夫が持っているものと同じキャップやサングラスが置かれていたりするようになったのだ。

「貼り紙があった時には凄く怖くなって、夫が仕事から帰ってきた後に一緒に警察に行きました。夫は『誰がこんなことをやったんだろう?』と不思議がっていましたし、警察にも『心当たりはない』と話していました」

 そうして“ラブホテル目撃情報”から約1年が経った5月、ついに夫の堪忍袋の緒が切れたのだった。