「沢から龍は生まれない」と言われている韓国の今
――塾にそれだけのお金がかかるとなると、金銭的に余裕がないと受験そのものが難しそうですが。
JIN 本当にそうです。お金がある家庭はいい先生を雇えるけど、そうでない家庭は自力で頑張らないといけない。塾があった方がより上を目指せるので、金銭的な格差が生まれてしまいます。
韓国に「개천에서 용난다(直訳:沢から龍が出る)」ということわざがあるんですけど、最近は、沢から龍は生まれないってみんな言ってます。どれだけ頑張っても綺麗な海には勝てないと。
――日本でも「親ガチャ」という言葉が流行りましたが、韓国でも同じように言われているんですね。
JIN そうですね。生まれた家庭である程度決まってしまうというのはみんな思っています。医者の息子は医者になるし、弁護士の息子は弁護士になる。お金がないと、塾にも大学にも行けません。ただ、受験そのものは平等なので、誰にでもチャンスはあります。
出願大学を決める全国共通のテスト「スヌン」
――韓国の大学受験はどのような仕組みになっているのでしょうか。
JIN まず推薦と一般募集があり、一般募集は全国共通のテスト「スヌン」を受けて、その点数で出願する大学を決めます。
日本の二次試験のようにそれぞれの大学のテストはありません。スヌン一本勝負です。誰もが同じテストを受けるからこそ、問題が簡単だと差がつきにくいので、かなり難しくなっています。満点を取る学生はほとんどいません。毎年1人いるかいないかです。
――スヌンの対策のためにみんな塾に通っていると。
JIN そうですね。一応、この中から出ますよと出題範囲は決まっているので、そこを勉強していればいいんですけど、いくら勉強しても不安は拭えません。
だからみんな毎日10時間以上勉強しています。スヌン前の1年間はほとんど遊ばない。今はSNSなどもあるから誘惑も多いんですけど、直前の期間は携帯を見ない学生も多いです。
――大学受験をしない学生はどのくらいいるのでしょうか。
JIN 2割ちょっとくらいですね。基本的には大学に進学します。あとは専門学校にいく学生もいます。ただ韓国では専門学校に対するイメージが悪いのも事実です。
勉強が苦手な学生は早期留学することもあります。外国語ができると、帰国子女枠があるので、競争率が高くないんです。だから「うちの子は勉強が苦手そうだな」と思った親が早々に子どもを留学させるというのはよくありますね。ただこれもお金がないとできないので、誰もができるわけではないです。