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――母親はかなり落ち込んだのでは。

橋本 兄が家からいなくなって「死にたい」と言ってました。私は幼い頃から、母が兄のことばかり褒めているような印象を持っていて。兄と比較されることも多かったので、それにすごくコンプレックスを抱いていたんですけど。

 兄がいなくなって、母が「死にたい」と言ったときに、「あ、お兄ちゃんがおらんかったら、お母さんは死ぬんや。私がおるのに」と悲しくなりました。昔から、母は私より兄のほうが好きなんだろうなあ、と思っていたけど、それが証明されてしまったというか。

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「何でそんなに隠すの」母親の恋人がトイレやお風呂についてきて…

――兄がいなくなって、母親の交際相手から性的虐待を受けるようになった。

橋本 最初は、私がトイレに入ろうとすると、一緒に付いてくるようになって。家で用を足すときはトイレの鍵を閉めてなかったんですけど、私が入ろうとしたときにパッとドアを開けてくるんです。

 ドアを閉めようとしたら「ねえ、開けてえやあ」「何でそんなに隠すの」「何でそんなに恥ずかしがるの」と言ってきて。私がお風呂に入ってるときも覗こうとしたり、入ってこようとしてきたり。

――徐々に「おかしいな」と思うように。

橋本 当時は小学5年生だったのもあって、彼の行動に性的な目的があるとは思わなかったんです。ただ、なんとなく気持ち悪いというか、「この人は何がしたいんだろう」と思っていました。

 

「お母さんには言いづらいこと」だとは感じていた

――母親にその違和感を報告したりは?

橋本 しませんでした。おじさんがトイレに入ろうとしてきたり、お風呂を覗こうとしてきたりする目的はわからなかったんですけど、「お母さんには言いづらいこと」だとは感じていたんですよね。

 もしその段階で母に言えてたら、もっとひどい性的虐待を受けることはなかったかもしれません。だけど、子どもながらにそれを言ってはいけない気がして。

――母親を悲しませたくなかった?

橋本 それもあると思います。あとは、そういうことをされている自分が恥ずかしい、みたいな気持ちもありました。

 でもそれから、おじさんの行動がどんどんエスカレートしていって。ある日、母がシャワーに入っているときに、コタツの中で物理的な性的虐待を受けたんです。

撮影=山元茂樹/文藝春秋

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