手塚眞との出会い

――その頃に成蹊高校の文化祭に来たんですね。

今関 そう。『ボーイハント』ができて上映しようとした時、1本だけだとちょっと弱いからもう一本、僕らと毛色の似たかわいらしい併映作を探そうと、『ぴあ』の自主映画欄を探っていくと、成蹊高校で『FANTASTIC★PARTY』というかわいいタイトルの作品があった。湯本と僕と小林君で行ってみたら、面白かったんですよ。当時はもちろん手塚眞という監督も知らなかったんだけど、クオリティも高いし、はっきり言って僕らよりも上手い。見終わった後に、これを撮った人に会いたいと言ったら、「僕です」と眞が出てきた。それで、「一緒に上映会をやらないか」というのがスタートです。

――そこに僕もうろちょろしてたんですよね。

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今関 そうです。利重剛とか小中とか。

――『ボーイハント』の内容を説明していただいていいですか。

今関 『ボーイハント』は、結構真面目な女の子が主人公で、モテなくて、夏なのに恋もできなくて、海に行ってボーイハントしようと思う。でも、奥手なのでできなくて、ずっと一日ビーチで椅子に座っている。そうすると、いろんな変わった人たちと出会うわけですよ。同じようにボーイハントしに来た女の子組とか、落ち込んでいた男の子の話を聞いてあげたり。出会いと別れの中で、彼氏はできなかったけど、いろいろ感じることができたという、ひと夏の青春ドラマ。

――小林さんが監督でしたね。

今関 そう。小林監督脚本です。当時流行っていたように、『ぴあ』でキャスト、スタッフとか募集したら、出演者が結構いっぱい来て、そこから選んで、という感じですね。

――今関さんはカメラ。

今関 そうです。あれはスーパー8で撮っているんですよ。ニコンのR10かなんかを借りて。

注釈
1)宮崎巌 『いつか見た楽園』(1982)でPFF入選。

2)小林弘利 脚本家。『星空のむこうの国』『「二人が喋ってる。』『江ノ島プリズム』など。ライトノベルの小説作品も多く手掛ける。

3)ムービーメイト100% 今関あきよし、小林弘利、湯本裕幸らで結成した自主映画グループ。

今関監督と小中監督 ©藍河兼一

<聞き手>こなか かずや 1963年三重県生まれ。映画監督。小学生の頃から8ミリカメラを廻し始め、数多くの自主映画を撮る。成蹊高校映画研究部、立教大学SPPなどでの自主映画制作を経て、86年『星空のむこうの国』で商業映画デビュー。97年、『ウルトラマンゼアス2 超人大戦・光と影』でウルトラシリーズ初監督。以降、監督・特技監督として映画・テレビシリーズ両方でウルトラシリーズに深く関わる。特撮、アニメーション、ドキュメンタリー、TVドラマ、劇映画で幅広く活動中。主な監督作品に、『四月怪談』(1988)、『なぞの転校生』(1998)、『ULTRAMAN』(2004)、『東京少女』(2008)、『VAMP』 (2018)、『Single8』 (2022)、『劇場版シルバニアファミリー フレアからのおくりもの』(2023)など。

次の記事に続く 来てくれた女の子にヒロインを頼んで出演してもらい……黒沢清監督や山本政志監督も来場した自主上映会から数多の映画監督が生まれていった