――まず誰に何を言っていいか分からないですよね。この注文を誰にすべきなのか。

今関 そう。でも、今思えば何をやったっていいんですよね。「いい。全部俺がやる」と言ったっていいんですよ。でも、何かどこか遠慮している自分がいた。非常に悔しくて、モヤモヤしていて。現場は正直敗北したと思ってる。仕上げで何とかしたという感じがした。仕上げは誰もいないから。まあ、いないというわけじゃないけど。トリミングしたり、パンしたり、アイリスしたり、ワイプしたり(注1)、いろんなことをして、僕のテイストを入れようと必死に仕上げはやりましたね。

大オーディションで富田靖子を抜擢

――大オーディションをして、富田靖子さんを選んだんですよね。

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今関 そうです。薬師丸ひろ子を募集した時の人数より多かったんです。応募者が12万7000。撮影が夏休みだったので応募者も多かった。だから現場も大変だったけど、それより疲れたのはオーディション。まず、書類選考。美人コンテストなら簡単に写真でパッパパッパでいいけど、アイコってキャラクターを選ぶので、会わないと分からないんですよ。予備オーディションでは1カ月半ぐらいで1万人と僕は会ってます。北海道から九州、名古屋、大阪、東京と、転々とオーディションして、ひたすら会い続けたのは大変なことでしたね。

――メイキングが同時上映されました。

今関 そうです。『グッドバイ夏のうさぎ』というドキュメンタリーで、大林さんのCM時代の仲間の山名兌二さんが演出していた。オーディションで靖子ちゃんが選ばれるまでとか、撮影中の苦労とかをやってました。これが面白いんですよ。悪いけど本編より面白いですよ。

――YouTubeで見直しました。

今関 面白いでしょう。

――非常に印象的だったのが、長ゼリフの、教室で富田靖子さんが泣くシーン。一度撮ったのに、最後リテイクしたんですね。

今関 僕も泣いてましたから。あれはうまくいかなくて。靖子ちゃんはまだ14だったんですよ。一緒に出ていた松下由樹ちゃんとか宮崎ますみちゃんとか、みんな17~18だったので。

――すごく面白かったのが、共演のベテランの方々、藤田弓子さんとか犬塚弘さんとかが靖子ちゃんにアドバイスするところ。

今関 紺野美沙子さんとか、みんないろいろ。「自分の自由にやっていいのよ」とかね。

――『さびしんぼう』で藤田弓子さんが靖子ちゃんのお母さん役をやっていますが、あのコンビは『アイコ』からだったんですね。

今関 そうです。藤田弓子さんは本当にあそこからスタートで。僕の映画も、あと、テレビでも出てもらってるし、最近だと『釜石ラーメン物語』でも藤田弓子さんに出ていただいて。

今関あきよし監督 ©藍河兼一

注釈
1)それぞれ後処理で映像に加工する技法。

次の記事に続く チェルノブイリの悲劇を描いた映画の完成直後に事件を起こした今関あきよし監督が、どん底のブランクから復活するまで