出窓 メジャーに近い“半地下”くらいまで行けばわかりませんけど、ほとんどの地下アイドルの運営は利益を独占して儲けているわけではないと思います。というよりも、そもそも儲かると思ってやっているというよりは、趣味や生きがいとしてやっている方が多く見えました。むしろ別の仕事で稼いだお金を使っていいものを作ろうとしている方も多くいると思います。
――みんなが持ち出しでやっている、と。
出窓 みんながそれぞれ犠牲を払って、それでもいつか全てが報われる一瞬が来ることを信じて自分の大半を賭けつづけているんだと思います。これはアイドルも運営もオタクもみんな一緒で、「いつか武道館へ」と大きすぎる夢を掲げて続けている。その夢を見続けているためには、すぐに叶ってしまわないくらい大きくて遠いほどいいんです。そこにたどり着ける可能性はたとえ低くても。
――でもやっている瞬間は楽しさもあるのですか?
出窓 「この一瞬だけ、やっててよかった」と思うことは何度もありました。それしかない、とも言えますが……。絶対に手が届かない共同幻視を、演者と運営とオタクが同じレベルで信じていられる間だけつづいて、ふと我に返ったら崩れるのが地下アイドルだと思います。
――かなり刹那的な印象を受けます。
出窓 刹那的でもあり、モラトリアムのやり直しみたいな雰囲気はずっとありました。アイドルも運営もお客さんも、青春時代にやり残したこと、モラトリアムに忘れ物がある人たちが多いのかもしれません。
「私にとってはなんというか……『泣きの1回』ですかね」
――辛い高校時代を過ごした出窓さんも取り戻したいものがあった?
出窓 私にとってはなんというか……「泣きの1回」ですかね(笑)。
――「お願いだからもう1回だけ」と。実際にやってみてどうでしたか?
出窓 自分が持ってるものを全部賭けて人生を取り戻すような気持ちで始めたアイドル活動でしたけど、解散から2年近く経ってようやく成功だったと思えるようになってきました。帰り道にマックでチョコパイを食べるとか、1つのものにむかって一緒に頑張るとか、帰り道にまた明日ねって別れるとか、仲間と中学や高校でできなかったことをみんなでやりなおしている感覚があって、確かに幸せな日々でした。
――やってみてよかった。
出窓 そうですね。高校時代に便所飯をしていなければアイドルにならなかったのだとすれば、あの惨めな気持ちも私の人生においては正解だったんだと思います。
――アイドル時代には、辛いことはありませんでしたか?
出窓 運営から解散を告げられたときは泣きました。笑い話としては、クリスマスイブに事務所へ呼ばれて、新年用のオフショルミニスカ巫女コスプレでチェキを撮った時は「何やってるんだろう」と思いましたね。
――クリスチャンの家で育った出窓さんが、クリスマスに巫女コスプレ。
出窓 そうなんです(笑)。小学生の頃から教会に通っていて、クリスマスって1年でいちばん聖なる日ですよね。その日になんで私は巫女のコスプレをしてるんだろう、これが私の選んだ道なのかって。あの日は地下アイドル界に魂を売った感覚がありました。

