――受け入れられている感があった?

出窓 “至らなさ”が評価されるのは、いわゆる萌え産業全般で同じですよね。たとえばコンカフェでも、会計をササッとできちゃう子より、「え、どうしよう。わかんな~い」みたいな子のほうが可愛げがあって人気が出たりするんです。でもその裏には、代わりにお会計をそつなくできる子がいるからこそ成り立っているわけで。“至らなさ”が評価される価値観は、逆に言うとちゃんとできる子が本当に報われない世界なんです。

――ご自身はどうでしたか。

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出窓 私は上手にできなくて、周りのできる子に助けられてばかりでした。それなのに「なもちゃんは個性があっていいね」と言われると「助けてもらっているのに私の方が得をしてしまってごめんなさい……」っていつも思ってました。

 

「私は『会いに来てください』という言葉が言えなくて」

――オタク時代はかなりお金を使うタイプのオタクだったと思いますが、自分がアイドルになってお金を払われる立場になったのはどうでしたか。

出窓 自分がアイドルを推している時は切実な重たいタイプのオタクだったので、自分を応援してくれる人に同じことを要求するのは心苦しくてできませんでした。自分の拙さをアピールして利用できればすごく有利になったかもしれないけれど、私は「会いに来てください」という言葉が言えなくて。誕生日ライブの時に「この日は絶対に来てください」みたいな、「絶対」も絶対に使いませんでした。

――確かにアイドルは“おねだり”上手じゃないと難しそうです。

出窓 あとは「好き」も言えませんでしたね。特典会でオタクに「〇〇ちゃん好きだよ」って言われて、「私も好きだよ」って軽く返せる子はやっぱり強いですよね。自分からの好意を率直に伝えられれば人気はでやすいでしょうけど、それは好意を売り物にするような気がして怖かったです。売り物にしちゃいけない物な気がして。

 

――出窓さんのファンは、どういったタイプでした?

出窓 よく「オタは推しに似る」と言うんですけど、おとなしくてあまり声を出したり騒いだりせず、私の生き方を含めて静かに見守ってくださる方が多かった気がします。

――地下アイドルだと、1回のライブにお客さんがひと桁ということもありますよね。

出窓 ひと桁どころか、自分のファンが1人のことも普通にありました。だから自分のことを応援してくれる人のことはすぐ覚えるし、毎回同じ人にお金を出してもらうのも心苦しくなっちゃうんです。固定された数人の気持ちを搾り取っているのではないかという感覚があって、「枯れる」時が来てしまうのではないかと怖かったです。