――厳格なご両親は、地下アイドル活動への反応はどうでしたか?
出窓 親にはずっと秘密でやっていました。衣装の入ったキャリーケースをこっそり部屋に持ち込んで、親が寝てから手洗いして、ライブの時は「バイト」と嘘をついて。でも最終的にバレて母には泣かれました。うちの親は門限も行動も厳しくて、「ご飯抜き」とか生殺与奪の権を握ってくるタイプだったので親に逆らったことなんて数えるほどしかありませんでしたが、アイドル活動が最大の反抗期でした。
「もう少し狂っていたかった…未練タラタラです」
――所属していた「ポエトリープ」が2023年に活動停止した時、未練はありましたか?
出窓 未練タラタラですよ。もともとは自分から乗り気ではじめたわけではないアイドル活動でしたけど、ステージに立つのが大好きでした。「ポエトリープ」はどちらかというと“正気”度の高い方のグループだったんだと思います。でも地下アイドルは、正気に戻った人間から辞めていく世界ですから。私はもう少し狂っていたかったですね。
――出窓さんも昨年の9月に大学を卒業されたんですよね。
出窓 そうですね。未練はあるし傷は深いけれど、やって良かったと思っています。これからの人生も前向きに考えられるようになりました。
――出窓さん自身は演者としては地下アイドルの世界を辞めましたが、今の形のまま存在するのはいいことだと思いますか?
出窓 友達を作るのが苦手だったり、お勉強やスポーツのようなわかりやすい特技がなかったりすることに苦しんで、地下アイドルという世界に生きやすさを見出している子たちは多いです。5年後、10年後の自分の人生を考える必要はもちろんあるけれど、そのうえでアイドルもオタクも「今だけこの歪な人間関係が必要だ」と思ってやっている。少なくとも私はそうでしたし、誰かの居場所になっているかけがえのない場所だと思います。
……でも、それは自分で自分に薬を処方するような難しさがあるのも事実で、ロキソニンとかと一緒で一時的には効いてもだんだん体は慣れていくから、そのうちもっと強い薬が必要になる。自分の人生が狂っても、その尻拭いや補填は誰もやってくれない。だからやっぱりどこかで立ち止まるタイミングは必要だし、もう少し持続可能になってほしい。でも「持続可能な地下アイドル」ってどうやったらできるんでしょうね。
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