夢の実現は惜しくもならなかった――。西山朋佳女流三冠が挑戦した棋士編入試験は第5局が1月22日に関西将棋会館で行われ、結果は試験官を務めた柵木幹太四段が勝利した。

 西山女流三冠は「五番勝負」の第1局を高橋佑二郎四段に勝ち、第2局を山川泰熙四段に、第3局を上野裕寿四段に敗戦。第4局は宮嶋健太四段に勝ち、史上初の女性棋士まであと1勝に迫ったが、最後はわずかに及ばなかった。

西山朋佳女流三冠

「務めを終えてホッとしました」

 第3局の試験官を担当した上野四段は以下のように言う。

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「世間的には西山さんを応援する声が多いと思ったので、正直大変な立場だなと思いました。ただ、皆さんに注目される舞台で将棋が指せることは嬉しかったです。1勝1敗となって3局目が決着局になることはなくなったので、あまりプレッシャーを感じずに対局に臨めました」

 上野は試験官の中で唯一、棋戦優勝の実績がある。そのこともあって西山にとってはもっとも強敵となる見方が将棋ファンや関係者の中では多数を占めていた。

「編入試験に関する記事を拝見したとき、そういう風に書かれていることもあって感じてはいました。この対局に限らず棋戦優勝に相応しい活躍が求められていると思って、一局一局に向き合っています。試験官の務めを終えてホッとしました」

西山さんの大事な対局でぶつかる機会が多かった

 第3局の結果、西山は土俵際に追い込まれたが、第4局で宮嶋四段を破り踏みとどまった。棋士編入試験が最終第5局までもつれ込んだのは今回が初である。最終戦で大役を務めることになった柵木四段に話を聞いた。

 

「試験が決まった時、自分の出番があるかどうかは正直、五分五分だと思っていました。ただ、奨励会時代から、西山さんの大事な対局でぶつかる機会が多かったです。西山さんが次点を取ったリーグもそうですし、また西山さんの初段昇段の一局では負かされました。これまでのこともあって、回ってくるような気はしていました。その時は全力を尽くして指すと覚悟は決めていましたね。実際に決まって、来たか、という感じです」

 五番勝負の第5局は実現するかどうか、直前までわからない。ましてや大いに注目を集めることはまず間違いない一番である。

「第3局を終えた時点で、西山さんが2勝1敗なら回ってきてほしいと思っていました。自分を負かしてのプロ入りならより納得できるかと考えていたので。実際は1勝2敗だったので、どちらでもよかったです。ただ、回ってきてほしくない、という気持ちはまったくなかったです」