昨季は昇級・昇段を果たし、服部慎一郎六段と組んだ漫才コンビ「もぐら兄弟」の活動も話題となった冨田誠也五段。インタビューの中編では、過酷だった奨励会三段リーグ時代の思い出やプロデビュー後について聞いた。
冨田さんの天敵
――冨田さんの三段時代には里見(現・福間)香奈、西山朋佳という2人の女性三段がいました。
冨田 特に同学年の西山さんは天敵で、小学生時代から勝てません。直接対決の勝率でいうと古森君や出口君との数字よりも悪いです。西山さんは私が上がった1期前のリーグで14勝していますし、棋士編入試験に合格してもまったく不思議ではないと思います。もっとも、試験官を務める新四段も、注目を集める舞台ですから気合を入れてきますよね。
他に女性の三段というと中さん(七海・現女流三段)ですが、彼女とは入れ替わりの形になったので、三段リーグでは指していません。しかし公式戦で負かされました。中さん、2歳年下なので昔から七海ちゃんと呼んでいますが「まさか七海ちゃんに負けるとは……」というおじさんじみた気持ちも出てきましたね。実はプロになってから私は福間、西山、中の全員に負けているんです(福間に1勝1敗、他の2人には0勝1敗)。
――あと、冨田さんの三段時代は、藤井聡太竜王・名人が奨励会を駆け上がって行った時期でもありました。
冨田 三段まで来ないと直接当たる機会がありませんから、それまでは警戒していませんでした。正直なところ、リーグがかぶるとも思っていませんでしたね。強い少年がいるんだ、というくらいです。
――ですが、藤井竜王・名人が1期抜けした三段リーグで対戦がありました
冨田 ラス前の日に当たりましたね。藤井さんが11勝で、私が10勝という昇段を争う一局です。こちらは上位者をたたくチャンスですから、当たりたかった気持ちがありました。でも将棋は完敗で、相手に我慢強く指されて自分が先に暴発です。実力もさることながら、中学生に我慢比べで負けるのが情けなかったです。兄弟子の池永さんも藤井さんと昇段を争っており、そういう意味でも勝たなければと思っていました。