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まだ将棋を指してもいいんだということが、うれしかった

――その期は5連勝スタートでした。それからも星を重ねて、リーグの後半で昇段が現実的な数字になると多少なりとも意識されるのではないでしょうか。

冨田 それでもプロになれるとは思っていませんでした。自分の中では一度けりがついているので。ただ、伊藤君や古賀君(悠聖六段)といった若手有望株と同じ時期に将棋を指せているのはうれしかったですね。有望な若手と言えば上野君(裕寿四段)もそうで、このリーグで上野君とぶつかった時は立命の人から教わった作戦を指して勝ちました。

 

――冨田VS上野戦はラス前の16回戦ですが、16回戦の結果、伊藤さんが14勝2敗で四段昇段決定、冨田さんが12勝4敗で自力、古賀さんが11勝5敗で他力一番手という状況になりました。

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冨田 その時も「残る2つを連勝できればプロか」という意識はなかったですね。逆に以前の三段リーグ最終日を三番手で迎えた時は「プロになったらどうしようか」などと思っていた記憶はあります。最終日は古賀君に逆転される可能性もありましたけど、その前の直接対決で負けているので、どこか納得する面はありました。

 最終日の1局目は大作戦負けで「やっぱりプロにはなれないのか」とも思いましたけど、逆転勝ちです。勝てばプロ入りという2局目は「前局がひどかったから、もう少しましな将棋を指せるだろう」と考えていました。その最終盤で数手後の勝ちを読み切って、手洗いで席を立ちましたが、洗面所の鏡を見た時に涙が出ていることに気づきました。まだ将棋を指してもいいんだということがうれしかったですね。やっぱり将棋が好きなんで。最終戦を井田君(明宏五段)や徳田君(拳士四段)といった弟弟子が見に来てくれたのもうれしく、昇段を決めて師匠に電話したら、師匠も泣いていました。