性加害を目的に、加害者が言葉巧みに子どもの信頼を得て手なずけようとする「性的グルーミング」は、どのように行われるのか。犯罪心理学者で、性暴力被害者のケアや心理分析などに携わってきた櫻井鼓さんは「加害者は、子どもとの関係性ができてくると、その子の心の弱みにつけこんで、その子を家族や友人などから切り離して自分に依存させようとする」という――。(第2回/全3回)

※本稿は、櫻井鼓『「だれにも言っちゃだめだよ」に従ってしまう子どもたち』(WAVE出版)の一部を再編集したものです。

写真=iStock.com/Hakase_ ※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Hakase_

「君は特別だからだよ」

加害者:おみやげをあげる

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子ども:ありがとうございます!

加害者:みんなにも配ったけど、これは君だけに買ったものなんだ

子ども:え、どうしてですか?

加害者:君は特別だからだよ

加害者は「おどし」と「贈り物」を使う

海外のオンライン・グルーミングの研究では、相手とのやりとりを続けたり、少しずつ性的行為に導いていったりするために、加害者は2種類のインセンティブ(誘因(ゆういん))を用いることが示されています。それは、おどしと贈り物だと言います。

おどしについては、たとえば、やりとりに使っているパソコンをハッキングしたり、入手した対象の性的画像公開をにおわせたりなどで、おどしをかけるというものです。

子どもの場合、自分専用のパソコンを持っていることは少なく、家族のパソコンを使うことが多いですよね。ですから、加害者にハッキングされるとパソコンがだめになって親に叱(しか)られてしまうことなどを懸念(けねん)して、言うことを聞いてしまう、ということです。

おどしは恐怖感や切迫感をあおりますから、相手の言うことに従ってしまいやすいのです。

贈り物については、対象の興味に応じたプレゼントをあげる、というように、第一義的には対象に利益を与えるため、ということがあるでしょう。贈り物をされると、それに見合ったお返しをする必要が出てきますから、やはり従いやすくなると言えます。