こうした被害に、SNSが一役買ってしまっている面があります。2人だけでつながることのできるSNSは閉ざされた世界であり、ほかの人たちがどんなやりとりをしているのかを見ることはできません。
ですから、加害者が、自分の身近にいるほかの人とも同じようなやりとりをしていたとしても、まずそれに気づくことはありません。愛情を示すような言葉を伝えられると、自分は特別なのではないか、という気持ちが生まれてしまうのです。そこに何かのきっかけで競争心が生まれていれば、そのことをほかの人に確認しようなどとは思いません。
性的行為それ自体は悪ではありません。物を盗(ぬす)んでこい、と命令されたら抵抗感を持つことができたとしても、性的行為は犯罪を行うほどにはハードルが高くないと言えるかもしれません。たとえばキスをする、ということが、その集団において愛情表現の1つであるとか、ゲームの一環(いっかん)であるなどと言われると、抵抗感はうすれやすくなるのです。
手なずけに気づくヒント
おどしにしても贈り物にしても、加害者が引き出したいのは、対象からのレスポンス(反応)です。加害者は、レスポンスを引き出し、それを糸口にして、次の関係性に持ちこみたいともくろんでいるのです。ですから、それに気づくということが大切になります。
ただし、気づくのがなかなか難しい場合もあるでしょう。子どもが習い事をしているなどの場合、その連絡事項(じこう)にSNSが利用されているのであれば、保護者もふくめたグループでやりとりができるプラットフォームを使うようにするといいのではないでしょうか。複数人が確認できるという状態をつくることが被害を防ぎます。
「家の人はわかってくれてないんじゃない?」
子ども:私はB高校に行きたいのに、親はC高校にしろって怒るんだ
加害者:自分なりの理由があるのにね
子ども:でも、親なりに将来を考えてくれてるのかもしれない
加害者:どうかな。家の人はわかってくれてないんじゃない?