加害者は子どもを周囲から切り離そうとする
「性暴力」といってもさまざまな種類があります。
電車内でのちかんなど、明らかに性暴力とわかるものもありますし、路上で物を引ったくられるという被害のすきに性的部位を触(さわ)られるというような、別の犯罪のかげに隠れている性被害もあります。
性暴力と聞くと、いやなことですが、加害者が暴行を加えるとか、脅迫したりする、といったことが想像しやすいかもしれません。たしかにこれまでは、そうした暴行や脅迫による性暴力に焦点(しょうてん)が当たることが多かったと思います。でも、性的グルーミングはそうではありません。もちろん、その経過の中でおどしなどを用いるということはありますが、むしろ、対象との間に愛情や信頼に基づく関係性を築いていく、というところにその核心(かくしん)があります。
こうした関係性の構築は、性的グルーミングのプロセスの中でも最初のほうに行われます。そして、おおよそ対象との関係性ができてくると、対象を周囲から切り離していく手口が認められるのです。ここで言う「周囲から」というのは、よりくわしく説明すると、周囲との「関係性から」、と「物理的な状況から」、という2つの意味をふくんでいます。
「相手の言うことがすべて」になる
周囲から切り離されると、第三者による情報が入ってきにくくなります。困っていたり、自分に自信がなかったりするような精神状態のとき、第三者の冷静な意見が助けになることがありますよね。でも、閉ざされた世界の中では、その世界にいる相手の言うことがすべてになってしまいます。
その結果、相手への依存が高まります。特に、信頼関係が築かれてしまった後では、言っていることがどこかおかしいとか、うそなのではないかと感じても、客観的な情報が入ってこないので、信じている人の言うことなのだから正しいはず、と考えてしまうのです。
このような周囲からの切り離しがどれだけ重大か、ということをみなさんにも少し想像してほしいので、いじめを例に出したいと思います。