多額の利益を上げた暴力団

 その後、そのベンチャー企業は、IR発表と事業実態に大きな乖離が生じていることや不祥事が次々に明らかになったことで、株価はさらに低迷し、株式市場からの退場を余儀なくされるが、話はそこにとどまらない。その新興仕手グループの裏には、買収のための資金を提供し、最終的に多額の利益を上げた、暴力団の存在も見え隠れしているからだ。

 その新興仕手グループに詳しい事情通が言う。

「そのグループは暴力団系の資金だけでなく、金融ゴロや半グレなどにも声を掛け、大きな資金を動かすことで、株式市場の小型株を使った株価操縦や、怪しい資金調達によってかなりの利益を得ているとみられています。ただし、常に同じグループ構成というわけではなく、案件によってメンバーは流動的に組み変わっています」

ADVERTISEMENT

 株式市場に目を光らせる金融庁関係者は、「スタンダード市場やグロース市場において、株価が低迷している企業や、経営陣が何らかの問題を抱えている企業をターゲットに、経営に影響を及ぼすことを狙っているグループがいることには警戒を強めています。

 ただ、一方でそういったグループには、金融ルールに詳しい証券会社の出身者や、素行の悪い弁護士なども加わっているため、そう簡単に尻尾を出さないという実態があります。監視側としても、そういった勢力に対するより一層の情報収集が求められていると実感しています」と危機感を表す。

 本来、株式市場は企業の実績や将来性に基づいて価格が形成されるべきであり、仕手筋等の存在により不自然な株価変動が生じることは、株式市場の健全性を大きく損なう問題である。新興仕手筋グループやハコ企業の存在は、投資家保護の観点からも無視できない話であり、トクリュウの収益源になっているという面においても、早期の実態解明が求められる。

ケツモチはヤクザという闇社会の暗黙知

「それでもケツモチを担えるのはヤクザだけです」

©AFLO

 暴力団関係者の男は、半グレ集団やトクリュウがどれだけ台頭してきても、最後の最後には暴力団による力の裁定が物を言うと力説する。「たしかに暴排条例の制定が進んで以降、ヤクザに代わって半グレ集団やトクリュウと呼ばれる連中が上手にシノギを行っているのは事実です。そういった連中が最新のテクノロジーを熟知しているのも、カネを持っているのも、また事実でしょう。

 でも、だからこそ、暴力団はそういった連中を生かさず殺さずに使おうとしている。ヤクザが最も恐れているのは実のところ警察に捕まることだからです。