賢いヤクザの行動原理とは?
暴力団に対する警察の締付けが強くなったことや、裁判による判決が厳しくなったことで、ヤクザは捕まることを極端に避けるようになりました。鉄砲玉として敵対組織にカチコミを掛けて、出所後に幹部として迎えられるといった武勇伝は、今は昔のこと。
現在においては、どれだけ自らが直接的な関与をせず、多くの収益を得られるかが賢いヤクザの行動原理になっています。
そのため、ヤクザにとっては金稼ぎの上手い半グレやトクリュウたちは、自分たちの得意分野である暴力装置を使って守るに値する存在とも言えるのです。盃事といった明確な関係性を持たない、半グレやトクリュウを資金源としても、捜査対象として結び付きにくいという考えもあります。
とはいえ、自らが資金源としている半グレやトクリュウが他の犯罪組織から狙われ、潰されるような事態になっては困るため、うっすらとケツモチとしてヤクザが存在していることを匂わせる必要もある。
ヤクザとしては、半グレやトクリュウとの関係性を表立って示すことには捜査上のデメリットしかありませんが、闇社会においてはある程度知らしめておく必要があるという、微妙なバランスがあるのです。
一方で、半グレやトクリュウの中核にいる連中にしてみれば、暴力団にがっちり組み込まれたくはないし、巨大な犯罪組織である暴力団と対峙できるだけの実力が自分たちにないとも理解している。それならば、一層のことカネを払って守ってもらうほうが得策だという考えが働くのです。
もちろん、そういった関係性が保たれている背景には、暴力団員と半グレやトクリュウの首謀者らの間に、地元の先輩後輩といった関係があるからでもあります。この持ちつ持たれつの関係はこの先も変わらないでしょう」
この点については、警察関係者の見解にも近いものがある。
「暴力団構成員の数は相当減ってきているし、高齢化も進んでいるが、中長期的に組織を維持していくための論理と体力を持っているという意味において、やはりヤクザが組織犯罪における最大の勢力であることには変わりない。
実際、若い頃に半グレとして活動していた連中の中にも、歳を重ねるうちに組に入るものが少なくない。つまり、いつまでも自分たちだけで闇社会を生きていくのは難しいということだろう。今トクリュウと呼ばれている連中も、ヤクザが裏にいるから活動できている面も多分にあるはずだ」
つまるところ、組織犯罪の頂点にいるのは、今も昔もヤクザ組織である暴力団であることに変わりはないとの見方は根強い。そのため、トクリュウ捜査において、警察が最大の使命としているのも、背後にいる暴力団まで辿り着くことなのである。