「松本劇場」で大ブレイク
『やんごとなき一族』の義兄嫁役も、『金魚妻』のスタッフが「松本若菜が壊れるところが見てみたい」と指名してくれたという。同役は回を追うごとにエキセントリックさを増していき、その役名から当初「美保子劇場」と呼ばれ、さらには共演した松下洸平が「いやもう『松本劇場』だよ!」と言ったことから視聴者にも広まった(「マイナビニュース」2022年9月28日配信)。共演者をしてそう言わしめるほど、松本の演技は役を超えて本人と一体化していたのだろう。
このときから「遅咲き女優」としてネットニュースなどでもとりあげられるようになった。とはいえ、もともと人の目を惹く魅力というか花がなければ高校1年生にして芸能事務所からスカウトなどされないだろうし、デビューも根強いファンを持つ『仮面ライダー』シリーズと華やかなスタートで、当時のバイト先でも客のあいだで噂になるほど目立つ存在であった。そう考えると、ここまでブレイクまでに時間がかかったのが不思議なくらいだ。
もちろん、単にルックスがいいというだけで役がつくほど俳優の世界は甘くない。ただ、いまや俳優がブレイクするには、容姿とか存在感(いずれの要素もかつてのスターには欠かせなかった)など以上に、カメレオン俳優という呼称に象徴されるような役の振り幅の大きさが求められているのはたしかだ。おそらくそこにはSNSの普及も影響しているのだろう。松本がブレイクしたのも、本人の努力と経験の積み重ねに加え、そうした傾向にデビュー10年を経てようやく、そして見事なまでにハマったからだともいえそうだ。
思えば、彼女と同姓で、同じく1984年生まれの松本まりかも、10代の頃から多くの作品に出演してきたが、ブレイクしたのは30代に入ってからドラマで強烈な“あざとかわいい”女性を演じたときだった。