地元・鳥取で大物俳優からスカウト
20歳になった頃にはある悩みを抱えていた。これは本人がさまざまなメディアで繰り返し語っていることだが、その数年前、高校1年生だった松本は、地元・鳥取の米子へ俳優の奈美悦子が撮影で来ていると聞き、探して握手をしてもらったところ、あとから逆に奈美と事務所の社長が探しに来てスカウトされていた。このときは話を聞くうちに、芸能界に入ることに不安を感じて断ってしまったが、高校卒業後、地元で就職してからしばらくして、ふと、このまま鳥取を出ずに一生を終えていいのかと悩むようになったという。そこで思い出したのが、先のスカウトだった。
事務所の社長に連絡をとった彼女は、親には内緒で東京に行って話を聞くと、やはり芸能界に入りたいと思い、その足で不動産屋に赴いて都内のアパートの一室を借りてしまう。本人によれば自分は心配性で石橋を叩いて渡るタイプなので、あえて退路を断つためそうしたのだという。それから一旦鳥取に戻って反対する両親を説得したあと、本格的に上京して事務所に入り、デビューに向けて演技のワークショップに通い始めたのだった。それが22歳になる前後で、その1年後の2007年には俳優デビューを果たす。
バイトを掛け持ち、「美人店員」と話題に
デビュー作はテレビの特撮ドラマ『仮面ライダー電王』で、主演の佐藤健の姉役だった。レギュラー出演であり、筆者もリアルタイムで見ていてよく覚えている。同じ頃、深夜のバラエティ番組だかで吉本の芸人たちが、新宿の劇場近くにある鰻屋に美人の店員がおり、じつはそれは松本若菜という駆け出しの女優らしい……と話題にしていたことも思い出す。実際、デビュー当時の彼女は鰻屋でバイトをしており、その後は寿司屋やカフェなど何軒かの飲食店を掛け持ちしていた。
デビュー作で一躍注目を集めたものの、その後、24歳から27歳ぐらいまでは出演する機会になかなか恵まれない時期が続いた。たまにドラマなどに出てもほとんどが殺される役ばかり。自分が思い描いていた“女優像”とのあまりのギャップに、自分が女優とはおこがましくて名乗れずにいたという。