「癒し系」イメージを確立するまで

 これは「男のやすらぎ」をスローガンに掲げたキャンペーンCMで、商品のターゲットとなる20~30代の働く男性に向けて彼女が「ひと息いれよ」などと呼びかける内容が好評を博す。最初は安田成美、古手川祐子との競演であったが、飯島がとくに人気を集めたため、その後は彼女単独でシリーズ化され、2000年まで続いた(後半は優香との共演となる)。

 その人気ぶりは、2年目の1995年のキャンペーンで実施された「やすらぎパーカー」プレゼントに、当選者数2万人に対し3435万152通もの応募があったことが如実に示している。これは日本のプロモーション史上最高の応募総数といわれたが、1996年のプレゼント第2弾「がんばってコート」には4403万5861通もの応募があり、さらに記録を更新した。

1998年、「ジョージア」プレゼント抽選会でハガキを選ぶ飯島直子

飯島直子の”笑顔”が印象的だったワケ

 CMのヒットは飯島の笑顔によるところも大であった。じつはこれには伏線があった。その数年前の1991年、日本テレビの新たなバラエティ番組『DAISUKI!』に出演するに際し、番組プロデューサーの増田一穂から一つだけ課題として「笑顔の作り方を毎日勉強する努力をしてください」と言われていたのだ。

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 増田Pがそんな課題を与えたのは、彼女が《まだまだ“モデル”の域を出ない表情で、タレントさんの顔をしていなかった》からだという(飯島直子『飯島直子の「ねえ、今日どこ行くの?」』学習研究社、1997年)。とはいえ、作り笑いではない、いい笑顔を作ることはかなり難しく、増田は飯島にずいぶん大きなテーマを課してしまったとも思ったが、それでも彼女の将来にかけてみたかったという。結果的にそれは大成功だった。

 増田は「ジョージア」のCMでの彼女の笑顔を見た瞬間、内心で「やった!」と思ったと、彼女の著書(同上)に寄せたメッセージで明かしている。

 飯島はこのCMのおかげで「やすらぎ系」、のちには「癒やし系」とも称された。ドラマでもセクシーな役から、『沙粧妙子・最後の事件』(1995年)で初めて清楚な女性を演じたのを皮切りに役の幅が広がっていく。

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