個人の好みが多様化した現在、「みんなが居心地の良い場所」というのは原理上、作れない。むしろ、何かを「排除」することでしか、誰かにとって本当に居心地良く感じる場所は作れないのだ。その意味で、「多様性」などという言葉は、表面上の偽善的な言葉でしかない。

つまり、ニセコ化するニッポンにおいて、かつて私たちが使っていたような意味での「みんなが仲良く幸せになる空間」は作れないのだ。この、圧倒的な現実を踏まえて考えなければ、公共性についてのすべての議論は空虚なものになってしまう。

谷頭 和希(たにがしら・かずき)
ライター
1997年生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業後、早稲田大学教育学術院国語教育専攻に在籍。デイリーポータルZ、オモコロ、サンポーなどのウェブメディアにチェーンストア、テーマパーク、都市についての原稿を執筆。批評観光誌『LOCUST』編集部所属。2017年から2018年に「ゲンロン 佐々木敦 批評再生塾 第三期」に参加し宇川直宏賞を受賞。
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