反対派は何を批判していたか
実際、新しくなったMIYASHITA PARKのショッピングモールのホームページを見てみると「渋谷区立宮下公園や周辺エリアと親和性の高い、ラグジュアリーブランドやストリートブランド、横丁やミュージックバー、シェアオフィスといった多様な価値観やカルチャー性の高い店舗が揃う」とあり、「ラグジュアリーブランド」が押し出されている。例えば、入居する「RAYARD」というショッピングモールは三井不動産が運営し、その中にはプラダなどの海外の高級ブランドが入っているわけだ。
「ホームレスの人たちの居場所を潰して、三井不動産という一企業の利益に資する、拝金主義のショッピングモールを作るとはなにごとか」というのが、再開発に強烈に反対する人々の主張であった。ホームレスを排除して、街を高級化し、囲い込むことが批判されたのだ(また、それ以前にも、白紙になったものの、MIYASHITA PARKのネーミングライツをナイキジャパンが購入することも検討されており、それに対しても大きな批判が持ち上がった)。
「選択と集中」による「静かな排除」
また、その開業イベントの際には、警備員が施設に張り付いていることも話題となり、「これが本当に公園なのか」といわれた。確かに、公共空間にもかかわらず、警備員がいて、常に監視されているのは、おかしな話ではある。
このように、MIYASHITA PARKに当初投げかけられた批判の声は、その空間が「選択と集中」を行っていること、それによって「静かな排除」が進んでいることに対する意見として捉えることができる。さまざまな人に開かれているべきはずの公共空間が、一部の「選択された人」のものになってしまったことが問題視されているのだ。
ホームレスの人々のことを考えれば、確かにこの批判は妥当だし、「選択と集中」における「静かな排除」という負の側面を顕著に表しているだろう。