再開発の結果、多くの若者たちが集まる場所に
一方、MIYASHITA PARKの現状を見てみると、皮肉とも言えることが起こっている。
というのも、実際にオープンしたその場所を訪れると、特にその屋上公園には、多くの学生や若者たちが集まっている。実際、株式会社ネオマーケティングが実施した調査結果によると、20〜50代でMIYASHITA PARKに一回以上行ったことがある人は、20〜30代がもっとも多く、この施設が若者を中心に利用されていることがわかる。
その要因の一つは、「公園」として無料で入ることができ、だらだらとそこにいることができる空間として機能しているからだろう。また、夜は、TikTokerの聖地とも言われており、若者が、スマホを前にしてさまざまに踊っている不思議な空間になった。都内でも有数の若者が集まる場所なのだ。その意味で、この場所は、ホームレスたちが集まりやすい空間から、若者たちが集まりやすい空間に変化した。
また、公園内にはスターバックスがあり、これも、ここに賑わいをもたらす要因の一つになっている(スターバックスが若者をターゲットの一つにしていることは『ニセコ化するニッポン』第3章で触れた通りだ)。さらに、3階のフードコートにもマクドナルドが入っていたりして、若者たちが集まっている。
「特有の人を惹きつけ、特有の人を寄せ付けない」
『ニセコ化するニッポン』第2章で確認した通り、渋谷自体、再開発の方向性として若い世代を集める街ではなくなってきているが、MIYASHITA PARKは例外的に若い人を集める場所となっているのだ。このように書くと、MIYASHITA PARKは本来の「公園」としてのある種の公共性を体現しているようにも思えるかもしれない。
この場所が取り上げられるとき、ジェントリフィケーションという側面が取り上げられやすいが、その実態を見てみると、そこはどちらかといえば「若者」にフォーカスされた空間になっているのだ。