民間と公共機関が協力して生まれた、東京・渋谷のMIYASHITA PARK(旧宮下公園)。ショッピングモールと公園が一体化したその空間について、チェーンストア研究家・ライターの谷頭和希さんは「個々人の要求が高まった今、ある場所に『居心地の良さ』を感じさせ、満足させるためには、『選択と集中』によるテーマパーク化、つまり「ニセコ化」が必要になっている」という――。

※本稿は、谷頭和希『ニセコ化するニッポン』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

写真=iStock.com/mizoula 2020年にショッピングモールと公園の複合施設として再開発された「MIYASITA PARK」 - 写真=iStock.com/mizoula

再開発とジェントリフィケーション

MIYASHITA PARKは、民間と公共機関が協力して生まれた公園だ。渋谷駅の横に立地し、線路に沿うようにしてショッピングモールと公園が一体化している。1〜3階まではショッピングモールになっており、その屋上に公園がある。独創的な鉄骨に覆われた公園で、渋谷の新しい名所の一つになっている。

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ここが話題になったのは、その再開発の際に起こった出来事。もともとここは、宮下公園という公園で、そこにはホームレスの人々が多く住んでいた。段ボールやテントを並べ、暮らしていたのだ。

公園自体は、木々に囲まれて鬱蒼としていたところであり、渋谷にあって渋谷ではないような、独特の空間になっていたという。一方で、このホームレスたちの存在は、度々問題になっており、何度か行政による立ち退き措置が行われたが、そのとどめがMIYASHITA PARKの再開発だった。その開発によって、半ば強制的な形でホームレスが一掃されたのだ。公園の建て替え工事のためにそこに立ち入ることができなくなり、公園自体が閉鎖されたからである。

こうしたホームレスの排除は、多くの人々によってきわめて批判的に取り上げられた。その背景にあったのは、再開発後のMIYASHITA PARKに見られた「ジェントリフィケーション」的な側面だ。ジェントリフィケーションとは、再開発によってある地域にブランドショップなどの高級店が多く進出し、そのエリアが高級化すること。『ニセコ化するニッポン』で述べる「選択と集中」に近い空間開発の方法だといえる。