──グルグル巻き?

北條 大学病院の眼科に通っていたんですが、血液検査もするので必ず注射されるんです。あとは目を見るのでまぶたをめくったり、光を当てたり。でも小さい子は嫌がって、手で払ったりするじゃないですか。

 だから検査の前は看護師さん2、3人に手足を押さえられて、マジックテープがついた拘束衣で、す巻きのようにグルグルの状態にされるんです。それで麻酔されるんですが、眼科の診察室は基本的に暗室なので、毎回拘束されたまま暗闇にいました。

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保育園時代の北條さん(本人提供)

──子どもにとっては恐怖が募りそうです。

北條 それが小学校低学年まで続きました。やがて治療の流れがわかると診察中もじっと座れるようになり、拘束はなくなりました。ただ私の中では「暗室=す巻き」というイメージがあって、今でもちょっとトラウマというか、暗所恐怖症ぎみなところがあります。

──他にはどんな記憶がありますか。

北條 私は活発なほうで、体を動かすのが好きな子でした。だから検査後「もう歩いていいよ」と言われたらすぐ走り回って、点滴の針が抜けてスリッパが血まみれになってしまい、よく怒られました。

 定期的に入院していたので、病院生活も日常の一部のような感覚で。看護助手さんがタオル交換するのを手伝ってみたり、新人のスタッフさんを他の方に「この人、新しく来た〇〇さんで~」と紹介したり、勝手知ったる感じで自由にやっていましたね(笑)。

北條みすづさん(本人提供)

「10歳まで生きられないかも」と余命宣告

──11歳で検査入院はいったん終了?

北條 そうですね。その歳でやっと余命宣告がなくなり、親も喜んでいました。

──余命宣告を受けていたんですね。

北條 目のがんが他の部分に転移する可能性もあったので。私自身は知りませんでしたが、生まれて数年は「10歳まで生きられるかどうかわからない」と、病院から親に余命が伝えられていたらしくて。それが11歳になった頃にがん細胞の活動が止まり、ひとまず大丈夫となったみたいです。