避難生活中に夫から受けたモラハラ、DV、そして不倫…

 いわき市で始まった新しい生活だが、6年間で破綻が訪れる。夫の浮気が原因で離婚することになったのだ。

「娘が夫のお下がりのスマホを使うようになって、そのスマホにLINEの履歴が残っていて浮気が分かりました。相手は会社に入ってきた若い女性でした。黙っていられなくて問い詰めると、夫は『自分のかあちゃんとやるやつはいない』と逆ギレしていました」

 真由美さんは当時の夫から、DVを受けていたこともあるという。

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「元夫からはモラハラを受けていました。『なんだ、その体は? ガリガリじゃないか?』とか、『もう好きって言わないからな』『好きじゃないから、帰ってこない』とも言ったりしました。自分の立場が悪くなると、暴力を振るうこともありました。

 離婚話になるとよく逃げていましたが、手をあげることも。家の中を引きずり回されることもあったので、娘も気づいていたと思います。浮気がわかってからの離婚に向けた話し合いでも、ほとんど会話になりませんでした。私の体調が悪くなってしまうこともあり、それを見て面倒くさそうにしていました」

 協議の結果、中学生だった娘の親権といわき市の家の権利は真由美さんが持つことになり、縁もゆかりもないいわき市での母娘2人暮しが始まった。真由美さんはパートや事務の仕事を始めたが、心配事は続く。22年12月に、真由美さんの両親が浪江町に戻ることになったのだ。

浪江町を一度は離れた真由美さん

「なんでこんな時に帰るのかと思いました。浪江町の『広報』には、町に帰ってきた人の名前が載っていて、年寄りだけ帰ってきたことがすぐにわかる。そんなことがわかったら狙われやすいじゃないですか。誰も助ける人がいなくて心配でした」

 23年2月にも、南相馬市で“闇バイト強盗”事件が起きた。犯人たちが高齢者宅に侵入し、住人の男性はレンチで頭を殴られ、女性は粘着テープで縛られた。そして現金8万3000円とネックレスを奪われた。

「高齢者を狙った強盗が話題になっていた時期で、両親が浪江町に戻るのは心配でした。それに私は離婚したし、娘も高校卒業が近づいていました。それなら私も『戻りたい』って思ったんです。

 それに、故郷を離れて離婚して、どこに行っても落ち着かず、孤独感がすごかったんでです。知り合いもいないいわき市でずっと暮らしていく自信はありませんでした。それで、いわき市の家を売って浪江町に戻ろうと考えるようになりました」