「ゆっくん何か面白い話して」と振られるのが楽しみ
湯浅 『あさが来た』は打ち上げも印象的でした。スタッフさんが「二次会で出し物をやるので、何かやってくれませんか」と声をかけてくれはって、僕を含む3人でコントをやることになって、すごいプレッシャーでした。だって、最前列で僕のコントを見ているのが波瑠さん、玉木宏さん、山内圭哉さんという錚々たる方々。もう口の中パッサパサで、過去最高に緊張しました。
――打ち上げでも爆笑をかっさらって。
湯浅 早着替えして波瑠さんの衣装のドレスを着て出て「お前誰やねん」みたいなオチでした。コントの導入に、僕がスタッフの方を誇張して物真似した『プロフェッショナル 仕事の流儀』風の映像を流したんですが、それを作るためだけに、BK(NHK大阪放送局)に1週間通い詰めたりして。
――「球を投げたら絶対面白く打ち返してくれる」という信頼感が、やはり朝ドラ14作出演の理由なんでしょうね。
湯浅 面白いことするのは好きですね。僕「ゆっくん」と呼ばれてるんですけど、撮影前に前室で役者さんやスタッフさんが集まってちょっと時間があるときも「ゆっくん何か面白い話して」と振られるのをうずうずして待ってることもあります(笑)。そんなことが楽しくて、スタジオがあるBKの9階ロビーに行くと、とにかく落ち着きます。
――『べっぴんさん』(2016年後期)のスピンオフドラマを皮切りに、『おちょやん』(2020年後期)、『おむすび』(2024年後期)では、俳優として出演されながら、関西や大阪の「ことば指導」も担当されるようになりました。このきっかけは?
湯浅 いちばん初めは朝ドラではなく『ボーダーライン』(2014年・NHK総合)というドラマの「大阪ことば指導」でした。関西のことば指導では関西芸術座の松寺千恵美さんという方が数多く携わっておられるんですが、『おちょやん』のときには「若い世代にも『ことば指導』を継承していかなければ」という動きがあって。はじめの頃は、メインの先生から僕自身も教わりながら現場についていました。
――学校の先生でいうところの、教育実習のような。
湯浅 そうなんです。教えてもらいつつ教える、という。地域による違いに加えて、「今はこの言い方をするけど昔は違った」と時代によっても違う言葉がたくさんあります。たとえば「もちろん」。僕ら世代は標準語とほぼ同じで「ち」にアクセントを置きますが、昔の大阪ことばでは、4音とも同じ強さで平坦に発音するんですね。「おおきに」も地域によって違って、「おお」を強く発音する地域もあれば「き」を強く発音するところがあったり。そういう細かいところからメモを取って勉強していきました。