関西人よりも関西弁を上手に使いこなしていたのは…
――ことば指導に関しても、湯浅さんの「現場を和ませる能力」が買われたんじゃないでしょうか。
湯浅 間に入ることが多いので、人当たりがいいに越したことはないんでしょうけど、一言に「ことば指導」といってもいろんな要素があるんです。脚本家さんが標準語で書かれた台本を方言に直す仕事、役者さんの台詞練習用の音源を作る仕事、現場で役者さんのイントネーションの細かい調整をする仕事など、さまざまです。僕の場合、自分が所属する劇団で脚本も書いてきたので、「本を書ける人」で、なおかつ役者もやっているというところが大きかったのかもしれません。「このシーンでこのお芝居やったら、こんな言い方もできますよ」という提案ができるので。
――これまでことば指導をされた中で、いちばん上手だと思った俳優さんは?
湯浅 やっぱり、『おちょやん』で主人公の千代を演じた杉咲花ちゃんはすごかったですね。もともと音感がいいことに加えて、努力を欠かさない方。前室で待ってる間もずっと昔の「船場ことば」で喋ってたんですよ。僕がボケたりすると、「ほんまだすか? ゆっくん兄さん」とツッコんでくれたりして。僕よりも昔の船場ことばが上手で、アドリブも自在にされてました。撮影終わって、標準語に戻すのが大変なんちゃうか? と思ってしまったぐらい。
――湯浅さんが「演者」と「ことば指導」の2役で現場に入るときはどんな感覚なんでしょうか。
湯浅 役者のスイッチと、ことば指導のスイッチは違うので、やっぱりちょっと変な感じにはなりますね(笑)。「あれ、さっきまでことば指導やってたのにメイクされてるやん」とか「あ、ことば指導の人が今日は役者として出てる」とか思われてそうで。「こっち(役者)のほうがメインなんです」とか思いながら。
――やはり今後も、あくまでもメインは「役者」でいきたいですか。
湯浅 そうですね。とにかく面白い役をたくさん演じていきたいです。僕は、「感動」の中身は「面白い」の比重がかなり大きいと思ってるんです。悲しいのに面白い。涙流しながらしゃべってるのに言ってることがちょっと変。半分泣いて半分笑ってる、みたいな。そんな役を極めていきたいです。「感情」が「動」くのが「感動」なので、僕の芝居を見てくださった方の心が動いてくれたら嬉しいですね。

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