そもそも健常者もそうだが、罪を犯した者の過去を調べると、貧困や悲惨な家庭環境といった様々な悪条件が重なることによって、不幸にして犯罪に結びついているケースが多い。

そうした事実を踏まえれば、現在の刑務所の状況は、障害者のほうが健常者よりも、より困難な生活環境に置かれる可能性が高いという、日本社会の現実を表しているようなものではないだろうか。

福祉のセーフティーネットから零れ落ちた人たちが、次から次と、塀の中に入ってきている。そんな彼ら彼女らを、刑務官たちが世話をしているのだ。

山本 譲司(やまもと・じょうじ)
作家、元衆議院議員
1962年、北海道生まれ。佐賀県育ち。早稲田大学卒。菅直人代議士の公設秘書、都議会議員2期を経て、1996年に衆議院議員に当選。2000年に秘書給与詐取事件を起こし、一審での実刑判決を受け服役。出所後、433日に及んだ獄中での生活を描いた『獄窓記』(ポプラ社)が「新潮ドキュメント賞」を受賞。障害者福祉施設で働くかたわら、『続獄窓記』『累犯障害者』『刑務所しか居場所がない人たち』などを著し、罪に問われた障害者の問題を社会に提起。現在も、高齢受刑者や障害のある受刑者の社会復帰支援に取り組む。小説作品として『覚醒』(上下巻)『螺旋階段』『エンディングノート』がある。