しかし、旧文通費には、そうした決まりはありません。領収書を提出する必要はないため、実質的には、何に使っても自由となっています。しかも、名目は経費ですから、歳費と違い、所得税がかからない非課税なのです。もし使わなければ、100万円を丸々非課税で得られることから、国会議員の「第二のお小遣い」と揶揄されることもあります。
たった1日在職しただけで100万円もらえる
旧文通費は歳費のように日割り計算されることはありませんでした。たとえば、12月31日に議員になっても在職1日としてカウントされるので、12月分の文通費100万円が満額支給されたのです。
2021年に実施された衆議院議員選挙では、日本維新の会の公認候補として東京1区から小野泰輔氏が出馬しました。小野氏は小選挙区で当選できませんでしたが、重複立候補していた比例で復活当選しました。
同衆院選は投開票日が10月31日だったため、当選者は10月に1日だけ議員として在職したことになります。そのため、同選挙の当選者たちは全員が文通費の満額100万円を支給されています。これを疑問視した小野氏は、日本維新の会を通じて文通費のあり方について問題提起しました(※3)。これを機に議論が始まります。
小野氏の文通費に対する問題提起がなされると、併せて議員会館が無料で使えるオフィスであることも注目され、それに伴(ともな)って文通費の必要性についても問われることになりました。「文通費そのものは必要だけれども、月100万円という金額は妥当なのか?」「そもそも経費として支給されているのだから何に使ったのか不明なのはおかしい。領収書の提出を義務化するべき」「余った文通費は国庫に返納するべき」といった意見が噴出しました。
調査研究広報滞在費に名称は変わったが…
こうした指摘は、おおむね正鵠を射(い)ています。しかし、議員の会報を支持者に郵送する費用もかかります。郵送代を1通110円とすれば、1万人の選挙区民に配布すると仮定したら、110万円が費消される計算になります。これだけで旧文通費100万円をオーバーしてしまうのです。これらに加え、国会答弁をするために必要な資料や書籍を買い足すこともあるでしょう。