国会議員、とくに衆議院は解散によって月の途中で失職することもあります。2010年以前は歳費を月単位で支給していました。たとえば、1月1日に議員として在職していれば、その日に辞職してもひと月分の歳費が満額支給されていたのです。

そのため、過去には、不祥事を起こして辞任必至に追い込まれた議員は、月が変わるタイミングで辞職を願い出るケースもありました。こうした議員の態度は、歳費欲しさに時間稼ぎをしたと受け取られることも多く、国民から批判の声が向けられることも珍しくありません。時代遅れの法体系との指摘を受け、2010年12月に議員歳費を日割り支給に変更する改正が行われました。

ちなみに、この改正によって、“珍事”が起きたこともあります。2019年に実施された参議院議員選挙で立憲民主党の比例区に立候補した市井紗耶香氏は、一歩及ばず、次点で落選しました。その後も彼女は参議院議員への挑戦を表明していましたが、2022年にいったん政治活動から距離を置くことを宣言しています。

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ところが、同じく2019年の参院選で立憲民主党公認候補として比例区で当選した須藤元気議員が、2024年4月に投開票の衆議院議員選挙の東京15区補欠選挙に立候補したために参議院議員を退職(自動失職)。そのため、選挙から5年後に市井氏が繰り上げ当選するという事態が起きたのです。

須藤議員は事前から立候補する意思を表明していたので、市井氏が繰り上げ当選する可能性が報じられていました。一方、彼女は政治活動から距離を置いていたため、繰り上げ当選しても辞退する旨を表明していたのです。

しかし、制度として当選辞退はできないようになっていました。そのため、市井氏は繰り上げ当選して議員になってから、即日に辞職するという手続きを取っています。この経緯で、彼女は在職1日という扱いになり、1日分の歳費4万3133円と、この後に説明する調査研究広報滞在費3万3333円が日割り計算されて、計7万6466円が支給されることになったのです(※1)