必ず稽古に参加して
そんな若きホープ、小田島さんにラブコールを送ったのは、俳優座劇場・劇場部係長の宮澤一彦さんだ。
「創志さんの訳はとても瑞々しいんです。昔々に書かれた物語の古めかしいセリフのはずなのに、彼の手にかかると現代の私たちにもしっかり響く言葉になる。しかもシェイクスピアらしさは残しながら。歴史ある劇場の最終公演だからこそ、今の、令和の言葉で上演されることに、私はすごく意味を感じているんです」
すると小田島さんは、「言葉は生きものですからね。特に戯曲は、文字として読まれるものである以上に、口に出されるものだし、耳で聞かれるものですから、そこはかなり意識しています」と応じる。
「登場人物の立場や性格、役割にふさわしい話し方、語尾に。また、演じる俳優さんの声や口調、演技によってセリフを変えることもあります。だから必ず本読みの稽古には参加するのですが、その時間はとても好きですね。皆で芝居を作り上げているという実感が持てるし、新訳ならではの醍醐味でもあるので」
一方、苦労したところは?
「シェイクスピアの特徴は、韻文と駄洒落のような掛け言葉の多用です。だからリズムはとても大切なのですが、言葉の意味を取りこぼさず、かつ、音にした時にシェイクスピア自身が狙ったような音楽性も失われないように訳すのは……かなり骨が折れました。ある意味、初めて祖父の本当の偉大さがわかったかも。僕にとっては、いつも駄洒落ばかり言ってるおじいちゃんなんですけどね(笑)」



