東京・六本木にある俳優座劇場が4月末に閉館される。創立は1954年。現代演劇の中心的な劇場として多くの劇団や団体に活動の場所を提供し、また通いやすい都心の劇場として演劇ファンに愛されてきた。いよいよ、その最終公演の幕が上がる。演目は、シェイクスピアの『嵐 THE TEMPEST』。俳優座劇場主催による公演で、この劇場に馴染み深い舞台俳優たちを中心にキャスティング。演出は、ベテラン舞台演出家の小笠原響さんが務める。そして翻訳を手掛けたのが、新進気鋭の戯曲翻訳家である小田島創志さん。この公演のための新訳に挑んだ。
「え! 僕でいいんですか? と思いましたね。もちろん光栄ではありますけど、同時に大変、責任重大で……」
日本を代表する戯曲翻訳家の小田島雄志さんを祖父に持ち、父・恒志さんも母・則子さんも同業という翻訳一家の出身。それゆえに、子どもの頃から演劇鑑賞は日常の一部だったという小田島さんだが、初めて自分でチケットを買って観に来た劇場は、ここだった。
「2年前、サマセット・モームの『聖なる炎』の翻訳で声をかけていただいた時もすごく嬉しかったんですが、その次がまさか最終公演で、しかもシェイクスピアとは難題でした。『テンペスト』には、もちろん祖父の訳本もあります。それでも祖父やほかの先人たちの訳ではなく、僕を選んでくれたわけですから、期待には応えないと……。少なくとも、今の僕に出来る限りのことはやりました」