まもなく公開される映画『BAUS 映画から船出した映画館』は、かつて東京・吉祥寺にあった「吉祥寺バウスシアター」を舞台とした作品だ。映画館でありながら音楽ライブや演劇、落語を上演したり、目玉企画“爆音上映”でも知られる吉祥寺カルチャーの聖地だったが、2014年、惜しまれつつ閉館。本作では、そのバウスシアターの元支配人・本田拓夫氏の父である本田實男(サネオ)と彼の家族をめぐる約90年の物語が描かれる。主演を務めるのは、学生時代からバウスシアターに通っていたという俳優の染谷将太さんだ。

染谷将太さん

「あの頃、バウスに行けば誰かしらに会えたんです。例えば映画を作っている友人だったり、そういう仲間に。だからずいぶん通いましたね。自分にとっては、まさに青春の場所という感覚です。監督の甫木元(ほきもと)(そら))さんとはちょうど同世代で、当時の記憶や体験を共有できたことはよかったですね。劇場のよさって、たまたまそこに居合わせた人たちと同じ作品、同じ空間を共有する面白さだと思うんですけど、とてもロマンチックだし、今やある種、贅沢な時間ともいえる。その価値は失われてほしくないと心から思います」

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 そんな映画館への思いが詰まった一作である。