青山さんの“呪い”

 ところで、染谷さんにはもう一つ、この作品に深い思い入れを持つ理由がある。22年に亡くなった映画監督・青山真治氏との縁だ。本作は、もともと青山氏が温めてきた脚本がベースとなっているのだ。

「青山さんの呪いに乗っからないか?ってプロデューサーの樋口(泰人)さんから声をかけていただいて、それは乗らないわけにいかない、と思いました。青山監督には、11年の『東京公園』以来、何度か呼んでいただいているのですが、敬愛する青山監督の作品に出演することは、僕にとって、毎回ものすごく興奮することでした。しかも聞くところによると、僕を役者として好んでくださっていると……。でも、一体、僕のどこを気に入ってくださっていたのか、結局、聞けずじまいになってしまったことが心残りでした。ですから、こうして青山さんの最後の作品に携われたのは光栄でしたし、本当にありがたい呪いでした(笑)」

 

 中でも“青山イズム”の継承を感じたシーンは?

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「サネオが映画館の観客に向かって演説をするシーンです。そこは青山さんの原稿をそのまま残したと聞いています。サネオの、青山さんの思いが強く伝わってくる内容でした。皆さんにも、ぜひ、それを感じていただきたいです。できればやっぱり、映画館で」

そめたにしょうた/1992年生まれ、東京都出身。子役としてキャリアをスタートし、『パンドラの匣』(09)で映画初主演。さらに『ヒミズ』(11)に主演、第68回ヴェネチア国際映画祭で日本人初のマルチェロ・マストロヤンニ賞を受賞し、国内外から注目を集める。映画を中心に精力的に活動中。

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映画『BAUS 映画から船出した映画館』2024年製作/116分
​監督:甫木元空 脚本:青山真治、甫木元空 音楽:大友良英
出演:染谷将太、峯田和伸、夏帆ほか
原作:本田拓夫『吉祥寺に育てられた映画館 イノカン・MEG・バウス 吉祥寺っ子映画館三代記』
©本田プロモーションBAUS/boid 配給:コピアポア・フィルム、boid
3月21日(金)よりテアトル新宿ほか全国公開
https://bausmovie.com/