「映画に時効はない、という若松孝二監督の言葉を、今、噛み締めていますね」と井上淳一さん。脚本・監督を務め、2014年に製作した短編映画『いきもののきろく』を、このたび改めて全国公開するに至った経緯を聞いた。
「もともとは名古屋の映画館シネマスコーレによる企画で、そこだけで上映するオムニバス映画の1つとして生まれた作品でした。評判もよかったし、自分でも気に入っていたけど、1時間にも満たない短編を劇場で観る感覚は、当時はなかった。ところが昨年、黒沢清監督の『Chime』(45分)やアニメ映画『ルックバック』(58分)などが劇場上映されて、これは機が熟したなと。それに、再編集こそしましたが、作品として全然古さは感じなかったんですよ」
本作の主演で、実は“原案者”でもある永瀬正敏さんも、同意しながら、こう語る。
「僕はいまだにデビュー作すら客観的に見られない質(たち)なんですが、今回、これを見返してみたら、撮影時の熱というか、当時の感覚を思い出して、またこういう映画を作りたい! という気持ちになりました。思い入れのある作品です」