2月21日から東京・新宿武蔵野館で上映される映画『おーい!どんちゃん』は、『南極料理人』『横道世之介』『さかなのこ』などで知られる沖田修一監督の、“隠れた傑作”だ。沖田監督の誕生したばかりの娘さん(どんちゃん)の成長ホームビデオを知り合いの俳優といっしょに撮る、というコンセプトから出発した自主映画は、撮影に3年余、完成までに更に5年を要した。これまで映画祭や一部のミニシアターでしか上映されてこなかったが、口コミでその面白さが広がり、ついに老舗ロードショー館である武蔵野館に登場。さっそく沖田監督にインタビューを行った。(聞き手:週刊文春CINEMAオンライン編集部)
『おーい!どんちゃん』
売れない俳優、道夫、郡司、えのけん。三人が共同で暮らす一軒家に、ある日、家の前に置いていかれた女の赤ちゃん。彼らは、その子を「どんちゃん」と名付け、友達カップルの坂本とあかりを巻き込み、戸惑いながらも、みんなで子育てすることに。やがて、季節は巡り、年は過ぎ、どんちゃんとの日々は、彼らを少しだけ変えていく。
監督・脚本:沖田修一/出演:どんちゃん、坂口辰平、大塚ヒロタ、遠藤隆太、師岡広明、宮部純子/撮影:道川昭如、手の空いた人/録音:落合諒馬、手の空いた人/2022年/日本/157分/©沖田修一
◆◆◆
配給も沖田監督自身が手がける
――2022年の下北沢映画祭で初めて『おーい!どんちゃん』を拝見したときに、通路をおいてどんちゃんがいて、顔を伏せたりあげたり照れくさそうで、賑やかに観ていたのを覚えています。
沖田 そうでしたか。最初はほとんど映画祭でしか上映していなくて、観てくれた映画館の方に「こんどうちでもやりませんか」と声をかけてもらったりして、イベント的に上映していました。それがだんだん広がって、各地のミニシアターでやって、今度は武蔵野館さんでもやりたいというお話をいただいたわけです。だんだん本格的な興行になってきてしまって(笑)。
――プライベートな作品でもあるので、特別な機会しか上映しないのかなと思っていました。
沖田 ええ。そもそも娘を赤ん坊の時から撮っている映画なので、あまり大々的にやるのはやめようと思って、配給も自分でやってコントロールできる範囲での上映をしてきました。けど、娘もだんだん成長して顔もかわって、映画を観て結び付けられることもないし、作品としては面白いと言っていただけるので、じゃあみんなに観てもらおうかと、半分開き直ったような気持ちです(笑)。
――今回は初めてチラシもつくりました。
沖田 そうなんです。これは『とりつくしま』などの監督の東かほりさんが『おーい!どんちゃん』を観に来てくれて、ぜひチラシを作りたいっておっしゃって下さったんで、「お願いします」という感じで(笑)。予告編も『ココでのはなし』のこささりょうま監督が作ってくれました。すべて人の好意に頼っていますね。
――皆さんが応援したいと言ってくれる映画なんですね。さらに今回はパンフレットも販売するそうですね。
沖田 そうなんです。もう関係者みんな好き勝手書いています。ヘンな映画のヘンなパンフレットになりました。なぜか出演者の小さい頃の写真が載っていたり……。