娘が生まれて買ったハンディカムで撮影

――『どんちゃん』ぽいですね。映画の最初では生まれたばかりだったどんちゃんは、いまはもう11歳になったそうですが、物心ついてからも協力的?

沖田 反抗期が来て「上映してくれるな」とか言い出すかと思っていたんですが、そういうこともなく今のところは普通です。毎回上映のたびに飽きずに、好きで観てくれているし、楽しんでいてくれるみたいです。撮影自体は覚えていないと言っていました。上映するときは毎回、上映後のアナウンスをどんちゃんに吹き込んでもらって使ってるんですが、成長とともに声がだんだん変わって、最初の頃とはすっかり違う声になりました。いまはアナウンスも上映するならやるけど……という感じですかね(笑)。

『おーい!どんちゃん』を撮影した家の前で ©文藝春秋

 撮影しているときは楽しかったんですけど、いざ出来上がったときに、これを人様に見せていいものなのか、かなり家でも話をしました。つくったからには見せたいけど、見せ方に迷いました。やっぱり、娘の人生に何か影響したらどうするのかって、周囲に注意もされました。それで様子を見ながら少しずつ上映をしてきました。

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――そもそもこの映画を作ることになったきっかけはどのようなものだったでしょうか?

©沖田修一

沖田 2014年のある日、映画で「えのけん」役をやっている大塚ヒロタさんと地元のUNIQLOでばったり会ったんです。それで飲みにいったら、彼が「ワンシーンで爪あとも残せない現場ばっかりだ」と悔しそうに言うので、それで僕が、ちょうど娘が生まれてちょっといいハンディカムを買ったから、家で何か撮りましょうかって言ったのが始まりです。だから赤ちゃんが出てくる話なら何でもよくって、『スリーメン&ベビー』みたいに独身男3人が子育てをする話にしようと。ちょうど坂口辰平君とか遠藤隆太君も大塚さんと同じワークショップだったので、一緒にやろうとなったんです。

 俳優と一緒に赤ちゃんビデオを撮るという、ちょっと贅沢な遊びのつもりで始めたんですが、いざ台本を書き始めてみると、職業病というか、きちんとストーリーを書きたくなってきました。最初20分くらいの台本で撮って、上がりをみたらこれは面白いのでは?と思い始めた。少し時間をおけばどんちゃんが大きくなるから、じゃあハイハイできるようになったら、それに合わせて台本を書く。そんな感じで続けて行った感じです。