当時監督が実際に住んでいた借家で撮影

――ごく少人数での撮影だったんですよね。

沖田 最初は俳優さんたちと僕だけでした。カメラマンも僕だったり、そのシーンに出ていない俳優がやっていました。録音も100均でモップを買ってきて、持っていたガンマイクをテープでぐるぐる巻きにして使ったり。

――当時、実際に沖田監督が住んでいた家で撮影されていたそうですね。

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©沖田修一

沖田 はい。2階建ての一軒家の借家でした。もちろん僕たち家族の居住部分もあったので、映画のためにすべて空けることはできなくて、ほとんどは1階とベランダだけで撮影しました。家族が大変でしたね。当時の苦労話を今回、うちの奥さんと女優陣がパンフレットに書いてくれています。子どもが生まれたばっかりだったし、その家で映画を撮るって、何かあったらどうするんだっていう感じでしたね(笑)。

 しかも撮影が続くうちに増えてきたんですよね、人が。話を知ったスタッフがだんだん手伝いに来てくれるようになって。だから映画が進んでいくと、映像のクオリティとか上がっているんです。でも、子どもの成長ビデオの延長線上にないと面白くないので、そのあたりの加減は難しかったですね。

『おーい!どんちゃん』を撮影した家の前で ©文藝春秋

――子どもが成長していく過程を実際に撮影していくという意味では、リチャード・リンクレイターの『6才のボクが、大人になるまで。』はやはり2014年11月に公開されています。

沖田 そうなんですよ。僕らが撮影しながら、こんなことやってる人いないよねって言っていたら、リンクレイターの新作が出てきて、もう驚愕しました。しかも12年もやってる! 上には上がいるなあって、騒然となったことを覚えています(笑)。