「親子関係もきょうだい関係も、離婚のように別れる方法があればいいのに」

――本人の意志に反して兄弟姉妹のケアを押しつけられる状況は本当によくないですよね。

白井 「家族は助け合うべき」といっても、夫婦や親子、兄弟姉妹と実はいろいろ別の関係性が含まれていますよね。夫婦はお互いを自分の意思で選べるし、離婚で家族をやめることもできます。親から見た子どもも、「子どもを育てよう」と自分たちで決意した責任がある。

 でも「子どもから見た親」や「兄弟姉妹」は自分で選択したものではないですよね。生まれてきたら勝手に「家族」にカテゴライズされ、「助け合い」を求められる。それはフェアではない。親子関係もきょうだい関係も、離婚のように別れる方法があればいいのに、と思います。

ADVERTISEMENT

――今はきょうだい児としての悩みは残っていますか?

白井 自分の中では解決したと思っています。母が亡くなるまでは、なんとなく心身の調子が悪くて、食欲がなかったり、自発的にやりたいこともなくて常に受け身な状態が続いていました。

 母が亡くなって家族との関係を断ち切ってからは心が解放された感があって、周囲からも明るくなったと言われます。

――きょうだい児のためのサイト「シブコト」も立ち上げていますよね。

白井 35歳くらいのころですね。自分に似た境遇の人の話を聞いてみたくなって、他のきょうだい児たちと交流するようにもなり、その中で「もしかするとこれでも自分は運がよかったのかもしれない」と思ったんです。

 

――運がよかった?

白井 僕が兄の世話をしなくて済んだのは男に生まれたからでしょうし、進学で実家を離れることも咎められませんでした。学費も出してもらっています。

 もし僕が女性だったらもっと介助の手伝いをさせられていたかもしれないし、兄がリビングでオナニーをするのを見るストレスももっと大きかったはずです。もしかしたら、もっと直接的な嫌がらせを受けていた可能性もあります。経済的にもっと苦しい家なら大学にも行けなかったでしょう。

 自分以上に困っているきょうだい児がいるかもしれないことに気が付いたら、その人たちの役に少しでも立ちたい、と思ったんですよね。

最初から記事を読む 「芸能人は障害のある人間を家族に選ばないのに…」知的障害の兄との関係に悩んだ男性(41)が“テレビの障害者感動コンテンツ”を嫌いだった理由

その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。