「説明する必要はない、結果で示すしかない」と言う大谷

 年明け早々のことだ。

 栗山監督はこんなふうに言っていた。

「だからアイツはバカ野郎なんだよ」

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 その言葉にも、いつもの冗談交じりのニュアンスはなく、むしろ怒気を含んでいるように聞こえた。栗山監督は、年末に大谷が別のインタビューで話していた内容を伝え聞いて、怒っていたのである。

 それは、大谷のこんな言葉だった。

「説明する必要はないかな、と。それを言ったところで(監督が)落ち着くわけでもないですし、それは結果で示すしかない。別に僕がそこで何か説明しても、言い訳にしか聞こえないじゃないですか」

 大谷は何のことを話していたのか。

 話を1年前に戻そう。

私服姿の大谷翔平 ©文藝春秋

キャンプ初日の怒りをメディアが報じ、ちょっとした騒ぎに

 2014年の2月1日、大谷はキャンプ初日のブルペンに入った。プロ2年目の大谷を、ピッチャーに軸足を置いた二刀流にシフトしようと考えていた栗山監督は、キャンプ初日の大谷に期待していた。しかしその日のブルペンでのピッチングは散々だった。結局、シーズンに入って大谷はピッチャーとして成長を遂げ、指揮官の不安は杞憂に終わったのだが、2014年の夏、栗山監督がこんな話をしていたことがある。

「あの初日は、命取られるんじゃないかと思ったくらい、心配した。バランスは悪い、コイツ何やってんだっていう、ひどすぎるフォームだったからね。あれが何だったのか、アイツに訊きたいよ。オレには何も言わないんだ。たぶん、翔平はピッチングとして成り立たなくてもいいと思っていたのかもしれないけど、こっちは最初のブルペンなんだから、キッチリしたフォームで投げてくれると思うじゃない。そこにギャップがあったんだろうね」

 その2014年のキャンプ初日、栗山監督は「ふざけんな」と大谷を叱り飛ばしている。それをメディアが報じ、ちょっとした騒ぎになったのだが、そんなときの大谷は、大騒ぎする周りを眺めて戸惑っているのか、あるいはどこ吹く風なのか、表情からは読み取りにくい反応になる。当時の思いについて大谷は、こう振り返っていた。

「大丈夫かっていう記事も多かったですし、監督からも怒られましたけど、僕としてはそんなに悪いことしたかなって感じでした。だって、音合わせの作業はキャンプが始まってからでいいかなと思っていましたし、あれは僕からしたら、前へ進むための段階です。決して後ろに下がっているわけではない。一見、技術的に衰えているというか、フォームがバラバラなように見えますけど、それは身体が大きくなって肉体的なレベルが向上したから。そのレベルにフォームがまだついていってなかっただけなんです」