「位牌はOK、遺体はNG」 雑然とする園内を歩いてみると……

 園内を歩いてみると、先ほどの話のようにアップダウンが多く、迷路に迷い込んでしまったかのような雰囲気だ。そこに閉鎖された秘宝館から集められたアイテムや昭和の家具、食器などが雑然と並んでいる。セーラちゃんによると「展示物は探さないし、選ばない」とのこと。生もの、違法なもの、弱者差別を助長するもの、危険なもの以外は集まってきたもの、すべてを展示している。

 「簡単に言うと『位牌はOK、遺体はNG』ってことですね。展示物を探そうとすると、どうしても自分の好みが入ってしまい、偏ってしまうでしょう。そうではなくて、庶民が現実の生活のなかで実際に使い、残してきたものすべてを展示したいんですよ」

東京藝術大学の学生による「ジンベイザメ神輿」 ©中村英史

 セーラちゃんの考えでは、「博物館は世の中にある希少で貴重なものではなく、ありふれた日常品を展示すべき」という。なぜなら、学問的価値のあるものは、ほとんどが庶民の生活とは関係がないからだ。「庶民の生活の痕跡こそを『ミュージアム』で展示すべきである」という考えから、まぼろし博覧会では、使われなくなったパチンコ台やおばあちゃんの遺品の人形なども飾られている。

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 「普通の博物館は、大昔のものばかり展示しているでしょう。専門家や歴史オタクはそれを見て、『いいな』と思うかもしれないけれど、庶民が、そんな古いことを知ったからってどうなんですか? 自分が生きている時代以外のことを知っても、何の意味があるのかなって思います。私からすると、化石や古代遺跡をありがたがるなんて、趣味の範疇でしかないんですよ」

 ひとつの考え方としては、とてもおもしろい。一般的な博物館にあるものが、無価値だとは思わないが、セーラちゃんのような人がいないと、「まぼろし博覧会」は誕生しなかっただろう。世の常識に疑問を投げかけ、我が道を行く。セーラちゃんのスタンスが、だんだんわかってきた。